[II-P06-4-03] FDG-PET/CTで確定診断されたが、抜去までに時間を要したペースメーカーリード感染の3歳男児例
Keywords:植込み型心臓電気デバイス感染症, FDG-PET/CT, 心不全
【背景】ペースメーカーリード感染に対する治療の原則はリード抜去だが、小児例の多くは、開胸手術を要する。【症例】内臓錯位症候群(左側相同)の男児。Glenn手術後の洞不全症候群に対してペースメーカー治療を行った。3歳時にFontan手術+ジェネレーター交換を行い、術後、肺高血圧クライシスのため2回の膜型人工心肺管理を要した。術後3か月時、るい痩のためジェネレーターが皮下から露出。最低自己心拍数 70 /分であり、ジェネレーターは抜去した。術後半年時点で、体温 37℃前半、CRP 2.0mg/dL台で推移した。他に症状はなく、血液培養からの菌検出もなかった。造影CT、Gaシンチで感染源は特定できず、FDG-PET/CTで横隔膜下のリードを中心に核種集積を認め、リード感染と診断した。肺動静脈瘻による低酸素血症(SpO2 70%後半(O2 1.5L/分))、心不全が遷延しており、少量の水分負荷で容易に呼吸困難、浮腫を呈した。開胸手術は、周術期死亡や合併症リスクが高く、局所麻酔下で横隔膜下のリードのみを抜去した。炎症所見は改善せず、内科治療で呼吸・循環状態の改善を図った後にリードを全抜去する方針とした。体肺側副血行路に対するコイル塞栓などの抗心不全治療を継続。水分制限は必要だったが、呼吸困難や浮腫は認めなくなり、低酸素血症も数か月単位で改善した(SpO2 90%前半(O2 0.5L/分))。数か月毎にMSSA菌血症を繰り返し、2〜8週間の抗菌薬治療を行ったが、CRPは完全には正常化しなかった。術後2年8か月時、リードを全て抜去し、MSSAとAcinetobacter baumannii を検出した。抜去後、再発熱はなく、CRPも正常化した。【考察・結語】リード感染では、診断3日以内の抜去が推奨されるが、手術自体のリスクも考慮する様に示されている。難治性心不全が併存する小児例では、感染の活動性を考慮した上で、抜去術前に内科治療で全身状態の改善を図ることが最終的な予後改善に寄与するものと考えられた。