[II-P07-4-07] 先天性横隔膜ヘルニアに対側の孤立性肺動脈を合併した新生児例:治療戦略の考え方
キーワード:孤立性片側肺動脈, 先天性横隔膜ヘルニア, 肺高血圧症
【はじめに】孤立性片側肺動脈(PA)は,主肺動脈(MPA)との連続性がなく患側の血流はPDAに依存する病態である.今回,横隔膜ヘルニア(CDH)の対側に合併したため管理,治療戦略の確立に難渋した例を経験した.【症例】胎児期に左CDHと診断.GA37w,2848g,帝王切開で出生.出生後に右PAの異常を疑われ転院.右PAはINNAから血流を受けMPAと連続性がなく孤立性右PAと診断.左は高肺血管抵抗でPDAを介してPAからAoへ流入する一方,右PAは抵抗が低いためこの血流もAoAを逆行して右PDAから右肺へ流入していた.日齢1のCDH修復術後もMPA→左PDA→AoA逆行→右PDA→右PAの血流は持続.右PAへの盗血が多く体循環不全となった.PDA縮小による盗血抑制を図ったが,左側の肺血管抵抗は高くPDA縮小により右心不全に陥ったためPDA開存が必要であった.左側のみでは全肺循環を処理できない状況を打開するため日齢14に自己心膜ロールを用いた右PA-MPA吻合+左PDA結紮を行った.直後は右PA吻合部狭窄と左高肺血管抵抗のためoversystemicであったがNO, Epoprostenol, Macitentanにより徐々に改善.術後28日までにNO, Epoprostenol漸減中止.右PA狭窄はむしろ高肺血流抑制になると考え介入せず,術後2か月の肺血流シンチで右:左=40:60であった.【考察】孤立性片側PAではBTSやPDAステントで患側PAを維持した後,成長を待って患側PA-MPA吻合を行うことが多い.チアノーゼ性疾患を合併しない場合,姑息術の期間は患側は動脈血を受け酸素化に全く寄与せず,健側は全肺血流量を受けるという負担にさらされる.本症例では本来健側であるべき左側がCDHの影響で全肺循環を処理できない状態であった.加えて右側が高酸素飽和度血流により肺血管抵抗が上昇すると将来的に左側と併せて肺高血圧に陥るリスクも考えられ,新生児期の一期的修復術に踏み切ったことが良い結果に繋がった.