[III-OR26-04] T波後半成分の延長は小児急性心筋炎における心室性不整脈発生予測に有用である
Keywords:急性心筋炎, T peak end, 心室性不整脈
【背景】心電図上のT波頂点からT波終末点までの時間(T peak-end)は心室筋の貫壁性再分極時間のバラつきを反映し, 種々の疾患において心室性不整脈の発生予測に有用とされる. 急性心筋炎はしばしば不整脈が出現し時に致死的となるが事前に予測する指標はない.【目的】T peak-endの急性心筋炎患者の心室不整脈発生予測について明らかにする.【方法】2011年から2022年に入院した小児急性心筋炎のうち来院時に心室性不整脈を認めた症例を除いた15例を対象とし, 心室性不整脈発生群(8例)と心室性不整脈非発生群(7例)に分け, 来院時の12誘導心電図で測定したT peak-end(Tpe)とQT, 心拍の補正Tpe(Tpe/QT, Tpe/QTc,Tpe/RRc)を比較検討した. 不整脈発生に対するパラメータのcut off値をROC曲線(receiver operating characteristic curve)で算出した.【結果】年齢を適合した対照群と比較し急性心筋炎はTpe/QT, Tpe/QTc,Tpe/RRcで有意に延長していた(p<0.001). 不整脈群, 非不整脈群で年齢は9.8(±4.2)歳, 4.5(±5.6)歳 (p=0.07), 女児は全体の44%, 42%であった(p=1.0). 不整脈の内訳は心室期外収縮が4例、心室頻拍が4例であった. 不整脈発生に伴い体外式膜型人工心肺を1例で使用し, 抗不整脈薬を6例で使用した. 不整脈群は非不整脈群に比べ来院時心電図のTpe, Tpe/QT, Tpe/QTc, Tpe/RRcが有意に延長していた(p<0.05). ROC曲線で算出した不整脈発生に対するTpe/RRcのcut off値と曲線下面積(area under the curve; AUC)は108(感度87.5%,特異度100%), 89.2であった. 【考察】急性心筋炎では来院時心電図の補正Tpeが延長し、不整脈発生はTpeと補正Tpeと関連があった. Tpe/RRc 108をcut off値とすると不整脈発生の予測に有用であった. 【結語】小児急性心筋炎においてT peak-endの延長を認める場合には, 発症時に循環状態が安定していても不整脈発生による急激な状態悪化に備え、慎重に管理をするべきである.