[III-P09-1-02] 意思決定能力が不十分な成人先天性心疾患患者への緩和ケアの導入
Keywords:緩和ケア, ACP, 成人先天性心疾患
【背景】成人先天性心疾患患者への緩和ケアが提言され,両親への依存度の高さや社会的自立の難しさなど,小児領域特有の問題が示されている.当院では心機能低下症例やEisenmenger症候群の成人例などに対し数年前から多職種でのACPを導入している.対象患者の中には精神発達遅滞などにより本人の意思決定能力が不十分な症例も多くACPの導入に苦慮している.今回,患者本人の意思決定能力が不十分な症例の緩和ケアにおける当院での取り組みを提示する.【症例1】29歳男性.Noonan症候群で肥大型心筋症に伴う左室流出路狭窄を合併している.幼少期は当院へ主に通院していたが成人してからは半年ごとに当院を受診し,普段は地方中核病院の循環器内科へ通院している.患者は有意語を話すことができず,左室流出路狭窄が進行した時期に両親と協議し内科的治療のみを継続し急変時には蘇生をしない方針としていた.突然死の危険性があるため両親に対し外来で定期的に治療の意思確認を行うことに加え,急変時の対応を行う地方中核病院の緩和ケアチームとの連携を進めている.【症例2】37歳男性.内臓錯位症候群,単心室,肺動脈閉鎖でBTシャントを施行後に経過観察をしている.患者を含めた家族全員に知的障害があり,現在は家族とは離れ成年後見制度を利用し施設での生活を送っている.患者は会話可能であるが意思決定能力が不十分であり,家族も同様であった.患者自身の病状に対する理解が乏しいため突然死の危険性や予後についての説明を繰り返し行い,多職種での介入を行いながら本人の意思を確認している.【考察】意思決定能力が不十分な成人先天性心疾患患者に対する緩和医療の導入には患者本人の意思を可能な限り尊重しつつ,家族との合意形成が得られるように家族の意思に配慮しつつ意思決定支援を行う必要がある.