[I-P01-5-06] 心房中隔欠損症と大動脈スティッフネス
キーワード:心房中隔欠損症, 大動脈スティッフネス, 拡張機能障害
【背景】心房中隔欠損症(ASD)は小児期を無症状で経過し、成人期まで症状を認めることは少ない。一方、閉鎖の有無に関わらず、ASDを伴わない症例と比較して遠隔期予後不良であることが報告され、ASDには心血管機能障害が内在する可能性を示唆する。ASDを特徴づける右室容量負荷は左室拡張障害と密接な関係があるが、同時に大動脈硬化を引き起こす可能性があり、ASD閉鎖後に右室容量負荷が軽減した後にも大動脈特性は遺残する可能性がある。ASDの存在により修復後も硬い大動脈特性が遷延するという仮説を検証した。【対象と方法】 2011~2023年に岩手医科大学附属病院で心臓超音波検査を施行したASD84例(未閉鎖、自然閉鎖、外科的閉鎖、経カテーテル的閉鎖)および正常構造心15例を対象に、非侵襲的心血管機能特性を解析し、その経時的変化を後方視的に解析した。【結果】閉鎖術を施行した症例は57例で、外科的閉鎖例は経カテーテル閉鎖例に比して低年齢であったが(p=0.0008)、閉鎖の有無による遠隔期の大動脈コンプライアンス(AoCv)や動脈硬化指標である脈波伝播速度(PWV)に差はなかった。小学校低学年時の拡張末期左室径(LVDd)は中学校時のEFと正相関し(p=0.0019)、PWVは負相関した(p=0.0075)。興味深いことに、経カテーテル的閉鎖例に限定すると、小学校低学年時のLVDd正常比(LVDd%N)が100%未満の群では、中学校時のEFとAoCvはいずれも低く(p=0.0157[EF], p=0.0440[AoCv])、PWVは高かった(p=0.0305)。【結論】短絡量の多いASDでは左室容量が正常より小さい傾向があり、そのことを背景として硬い大動脈特性に寄与する可能性がある。今後はさらに欠損孔の大きさや位置による心血管機能への影響についても検討する意義があると考えられた。