第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

染色体異常・遺伝子異常

ポスター発表(I-P02-1)
染色体異常・遺伝子異常2

2024年7月11日(木) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:柴田 映道(慶應義塾大学医学部小児科学/日本赤十字社栃木県支部足利赤十字病院小児科)

[I-P02-1-02] Noonan症候群患者の自然歴についての検討

大田 千晴, 岩澤 伸哉, 矢尾板 久雄, 星 菜美子 (東北大学病院 小児科)

キーワード:Noonan症候群, 肥大型心筋症, 遺伝子検査

【背景】Noonan症候群 (NS) は,特徴的な顔貌,低身長,先天性心疾患などを合併し,原因遺伝子としてrat sarcoma (RAS)/mitogen activated protein kinase (MAPK) シグナル伝達系の活性化に関与する複数の遺伝子変異(PTPN11, SOS1, RAF1, RIT1LZTR1KRASNRASBRAFなど)が知られている.合併心疾患としては肺動脈弁狭窄症 (PS),肥大型心筋症 (HCM),心房中隔欠損症 (ASD) が多く,その頻度や重症度は,合併する遺伝子変異により異なるとされる.これまでにNSの長期にわたる自然歴についての報告は少ない.
【目的】NS患者の自然歴を検討する
【方法】対象は当科外来で経過観察中のNS患者.診療録を用い,年齢,性別,遺伝子検査の有無,病因遺伝子の種類,家族歴,診断契機,症候,治療,予後について後方視的に検討した.
【結果】対象となった患者は20名(女性7/男性13).年齢中央値は17.9歳 (四分位範囲15.0-21.3)歳,遺伝子検査は11例で施行され,PTPN11 4例, RAF1 3例, SOS1 1例, RIT1 1例, KRAS 1例, BRAF 1例, 検出なし1例であった.家族歴のある症例は3例,うち1例は患児,母,祖母にSOS1変異があり,全員がASD+PSを呈していた.診断契機(重複を含める)としては低身長(55%),特異顔貌(35%),心疾患(25%),低出生(15%)であった.心疾患は80%,低身長は70%,側弯,甲状腺機能低下症,睡眠時無呼吸をそれぞれ15%,乳び胸は5%に合併していた.心疾患に対して手術やカテーテル治療を要したものは25%,内科的治療は20%であった.成長ホルモン投与は25%の症例に行われていた.死亡例は1例,重症心不全例は3例で,全例がHCM症例であり,うち3例がRAF1(すべてp.Ser257Leu)変異,1例は遺伝子検査未検であった.
【考察】心疾患の合併率や症候,予後に関しては,従来の報告の通り,遺伝子検査結果との関連が認められた.
【結論】NSの症候や予後の予測に遺伝子検査が有用である.