第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション6(I-PD6)
大動脈弁形成時代におけるRoss手術の位置付け

2024年7月11日(木) 13:10 〜 14:40 第5会場 (4F 413+414)

座長:盤井 成光(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
座長:菅野 幹雄(徳島大学大学院医歯薬学研究部 心臓血管外科学分野)

[I-PD6-3] Ross手術後のpulmonary autograftの長期成績と今後の課題

藤田 周平, 小田 晋一郎, 前田 吉宣, 五十嵐 仁, 後藤 泰孝, 山岸 正明 (京都府立医科大学 小児心臓血管外科)

キーワード:大動脈弁, ロス手術, 大動脈弁閉鎖不全症

【目的】小児期や若年女性の大動脈弁疾患においてRoss手術(Ross-Konno手術を含む)の有用性が近年再評価されているが、経時的にautograft不全や基部拡大が生じることが分かり遠隔期の再手術時期や術式もまた問題となっている。当院のRoss手術後のAutograftの成績を検討し、今後のRoss手術の位置付けについて議論したい。【対象】当院において1997年11月以降に行われたRoss手術は58例(Konno法による弁輪拡大の併施は6例)で年齢は11歳以下28例、12歳以上10例。疾患内訳は単独AS 19例、単独AR 19例、ASR 19例、生体弁不全1例。先行治療はASまたはASR症例に対する経皮的大動脈弁形成術(PTAV)12例、AVP 5例(交連切開術4例、弁尖再建術1例)であった。【結果】術後最長26.1年(中央値11.2年)の観察期間において死亡0例、心移植1例。moderate以上のAR回避率は10年85%、15年75%、20年50%であった。ARに対する再介入は5例(8.6%)、うちAVR 2例、Bentall手術3例であった。Autograft基部拡大(45mm以上)の回避率は10年100%、15年81%、20年42%であった。またAVRの適応でない大動脈基部拡大に対してFlorida sleeve法による基部縫縮・補強を併施したものが2例あった。Autograftに対するすべての再介入回避率は10年100%、15年96%、20年66%であった。術後ARおよびAutograft基部拡大に対して手術時年齢、原疾患(ARかどうか)、大動脈二尖弁で単変量および多変量解析でリスク因子の解析を行ったがいずれも有意差を認めなかった。【結論】Ross手術の成績は良好であり抗凝固不要や成長の可能性などの点で有用性が高いが、術後遠隔期10年を超えると経時的にAR増悪や基部拡大が進行し、Autograftに対する再介入を要する症例が増加してくる。思春期以降のRoss手術時には選択的に人工血管によるAutograft補強を行なって遠隔期再介入の回避を図る必要がある。