[II-OR19-03] The Molecular Mechanisms Governing Ventriculoarterial Concordance in Mice
Keywords:流出路の形態形成, 転写因子Pitx2, malseptation theory
臓器錯位症候群は、臓器の左右非対称な形態形成における先天性の異常であり、多くの場合で複雑先天性心疾患を伴う。マウス胚において、脊椎動物の左右非対称な臓器形成の遺伝子プログラムの中核を担うNodalシグナルの直接の下流で機能するビコイド型ホメオボックス転写因子Pitx2は、左側の側板中胚葉に特異的に発現し、内臓の形態の左側化を担うと考えられている。Pitx2の発現を誘導された細胞は出生後に至るまでPitx2を発現し続け、心臓では左心房全体、一部の左心室、及び一部の流出路の構造に寄与する。Pitx2 ΔASE/ΔASE変異マウスは、Pitx2が左側に特異的な発現をするための必要十分なエンハンサー(ASE)を欠いており、側板中胚葉でのPitx2の発現を失う。その結果、心臓では両大血管右室起始と大血管転位を伴う複雑先天性心疾患を生じる。これまでに、左右心室と大血管との正しい連結関係を司るPitx2の分子機構の詳細については、多くが不明のままである。この問いに答えるため私たちの研究グループでは、Pitx2 ΔASE/ΔASE変異マウスに対し、シングルセル解析(scRNA-seq)、3D画像解析、及びマウスES細胞によるin vitro心筋分化系を用いたPITX2の標的遺伝子解析(Cut & Runアッセイ)を行った。ここで得られた独自のデータに基づいて、次のような流出路形成機構のモデルを提案したい:(1) PITX2は細胞骨格系の制御を介してPitx2発現細胞の平面細胞極性シグナルへの応答を制御し、(2) それにより、流出路の左側から右側への回旋運動を生み出し、(3) この回旋によって神経堤細胞がらせん状に配置され、大動脈と肺動脈の適切な空間配置が決まる。遺伝的な左右非対称プログラム下で、Pitx2がどのようにして流出路の形成を担っているのか、その分子機構についてここで議論したい。