[II-OR19-04] Investigation of drug delivery and functional activation of rat cardiomyocyte mitochondria
Keywords:心筋細胞ミトコンドリア, ミトコンドリア薬物送達, 心筋症
【背景】近年、筋ジストロフィーに伴う心機能障害の進行にミトコンドリア機能の低下が関与していることが明らかになり、ミトコンドリアを標的とした治療の可能性が検討されている。しかし、心筋細胞ミトコンドリアに対し薬剤を送達し細胞機能向上に成功した報告は少ない。本研究では、ミトコンドリアに特異的に薬物を送達するナノキャリアであるMITO-Porterを用いて正常ラット心筋細胞におけるミトコンドリア機能の活性化を試みた。【方法】標的細胞としてラット心筋細胞(H9C2)を用いた。送達のためのナノキャリアとしてミトコンドリア標的型脂質ナノキャリアであるMITO-Porterを使用しミトコンドリア活性化物質であり呼吸鎖複合体の補酵素でもあるが難水溶性のため単体ではミトコンドリアへ到達しないコエンザイムQ10(CoQ10)を心筋細胞へ送達した。ミトコンドリアへのMITO-Porter到達は共焦点レーザー顕微鏡を用いて確認した。ミトコンドリアエネルギー産生の指標としてミトコンドリア酸素消費量(OCR)を測定しCoQ10送達による介入効果を検討した。【結果】 CoQ10送達によりミトコンドリアエネルギー産生能を有意に改善することに成功した。さらに送達するCoQ10量を変化することにより投与量依存的なミトコンドリア呼吸能上昇を示した。これらのことから、心筋細胞ミトコンドリアにCoQ10を送達することによるエネルギー産生能の改善が示唆された。【結論】ミトコンドリアへのコエンザイムQ10の送達は、心筋細胞のミトコンドリア機能を改善することが示唆された。これはミトコンドリアへの治療介入が心筋症治療の候補となる可能性を示す。ミトコンドリアのエネルギー産生障害が報告されているデュシェンヌ型筋ジストロフィーの心筋症など先天性心筋症への展開を今後検討する。