[II-P02-1-07] 発作性上室性頻拍後に心原性脳梗塞を発症した乳児例
キーワード:不整脈, 合併症, 脳塞栓
【背景】発作性上室性頻拍(PSVT)は乳児期に最も多くみられる不整脈で一般的には予後良好と考えられており、塞栓症との関連の報告はまれである。また小児期の脳梗塞の約30%が、複雑型心疾患 、カテーテル、心血管手術、循環補助デバイスなどの循環器的原因を背景に持つが、不整脈に起因するものは少ない。【症例】特記すべき周産期歴、既往歴、家族歴のない2か月男児。入院前日から哺乳意欲と活気が低下し、当日顔色不良となり救急搬送された。心拍数270bpmの頻拍、多呼吸、陥没呼吸、末梢冷感を認め、心電図から左脚ブロック型の変行伝導を伴うPSVTと診断した。アデノシン三リン酸(ATP)の投与で洞調律に復帰したが、同日中に左共同偏視が出現した。頭部MRIの拡散強調画像で左中大脳動脈領域に高信号領域を認め、脳梗塞と診断した。無呼吸も出現したため、当院PICUへ転院、人工呼吸管理を開始した。経胸壁心エコーで心内血栓を認めず、低月齢であることを鑑みて当初は抗血栓療法を行わず、 出血性梗塞がないことを確認したのちにワルファリンを開始した。入院後に短時間のPSVTが再発したが、プロプラノロール内服により消失した。入院当初は抗てんかん薬の投与を要したが、明らかな神経学的後遺症なく、退院した。【考察】PSVTの持続、心機能の低下により血流がうっ滞したことで形成された血栓が、ATPによる洞調律化をきっかけとして脳血管に塞栓したと考えられた。 PSVTによる血栓塞栓症は少数だが、乳幼児、頻拍の持続が長い症例が多い 。動悸を訴えることのできない乳幼児では、PSVTが持続し、心不全症状を契機に初めてPSVTと診断される可能性があり、血栓塞栓症の合併を考慮した管理が必要である。