[II-SY7-3] 拘束型心筋症における遺伝学的検査の意義
Keywords:拘束型心筋症, 遺伝子, 予後
【背景】
小児拘束型心筋症(RCM)は非常に予後不良な疾患である。これまでの研究で、RCMの約半数に病原性遺伝子バリアントが同定されると報告されてきたが、遺伝学的背景と予後との関連は明らかではなかった。
【方法】
当院で1998年から2023年までに診療した15歳以下のRCM 42症例のうち、本研究および全エクソン解析に同意の得られた31例を対象に、臨床背景や血行動態データ、予後について後方視的に解析を行った。
【結果】
31症例のうち、病原性遺伝子バリアント(pathogenic or likely-pathogenic)を16例 (52%)で同定した。13例では明らかな病原性バリアントは同定できず、2例は病原性の判定が困難でvariant of unknown significance (VUS)と判断した。病原性遺伝子の内訳は、TNNI3: 9例、TNNT2: 2例、FLNC: 3例、MYH7: 1例、MYL2: 1例であった。バリアント同定群16例と非同定群13例とで、診断年齢、心筋症の家族歴、心室頻拍/細動の有無、学校心臓検診での診断、などの臨床背景に有意差はなく、診断時のLVEDP, RVEDP, CI, mPAP, PVRI, LVEFにも有意差を認めなかった。しかし、Kaplan-Meier曲線解析では、病原性バリアント同定群で診断後のtransplant-free survival rateは有意に低かった。(log-rank test, P=0.0046) 特にTNNI3(心筋トロポニンI)変異群では、ほとんどが診断後早期に移植あるいは死亡したが、症例数が少なく、遺伝子別の予後リスク層別化は現時点では困難であった。一方で、学校心臓検診を契機に診断された群は、有症状で診断された群よりも有意にtransplant-free survival rateは良好であった。
【結語】
病原性バリアントが同定される小児RCMの予後は不良であり、遺伝学的検査はリスク層別化に役立つ可能性がある。病原性遺伝子別での予後リスク層別化のためには、さらなる症例の集積が必要である。
小児拘束型心筋症(RCM)は非常に予後不良な疾患である。これまでの研究で、RCMの約半数に病原性遺伝子バリアントが同定されると報告されてきたが、遺伝学的背景と予後との関連は明らかではなかった。
【方法】
当院で1998年から2023年までに診療した15歳以下のRCM 42症例のうち、本研究および全エクソン解析に同意の得られた31例を対象に、臨床背景や血行動態データ、予後について後方視的に解析を行った。
【結果】
31症例のうち、病原性遺伝子バリアント(pathogenic or likely-pathogenic)を16例 (52%)で同定した。13例では明らかな病原性バリアントは同定できず、2例は病原性の判定が困難でvariant of unknown significance (VUS)と判断した。病原性遺伝子の内訳は、TNNI3: 9例、TNNT2: 2例、FLNC: 3例、MYH7: 1例、MYL2: 1例であった。バリアント同定群16例と非同定群13例とで、診断年齢、心筋症の家族歴、心室頻拍/細動の有無、学校心臓検診での診断、などの臨床背景に有意差はなく、診断時のLVEDP, RVEDP, CI, mPAP, PVRI, LVEFにも有意差を認めなかった。しかし、Kaplan-Meier曲線解析では、病原性バリアント同定群で診断後のtransplant-free survival rateは有意に低かった。(log-rank test, P=0.0046) 特にTNNI3(心筋トロポニンI)変異群では、ほとんどが診断後早期に移植あるいは死亡したが、症例数が少なく、遺伝子別の予後リスク層別化は現時点では困難であった。一方で、学校心臓検診を契機に診断された群は、有症状で診断された群よりも有意にtransplant-free survival rateは良好であった。
【結語】
病原性バリアントが同定される小児RCMの予後は不良であり、遺伝学的検査はリスク層別化に役立つ可能性がある。病原性遺伝子別での予後リスク層別化のためには、さらなる症例の集積が必要である。