The 60th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Symposium

Symposium 7

Fri. Jul 12, 2024 4:40 PM - 5:55 PM ROOM 5 (4F 413+414)

座長:小澤 綾佳(富山大学医学部小児科)
座長:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科)

[II-SY7-4] 左室心筋緻密化障害における遺伝子診断の意義

古道 一樹1,2 (1.東京都立大塚病院 小児科, 2.慶應義塾大学 医学部 小児科学教室)

Keywords:細胞周期, 心臓転写因子, ゲノム編集

近年の網羅的遺伝解析により、左室心筋緻密化障害(Left ventricular non-compaction: LVNC)の疾患原因遺伝子が多数同定されてきた。LVNCの疾患発症メカニズムは多様性を有すると考えられているが、小児期に同定される遺伝子変異の約80%はサルコメア関連遺伝子が占めており、中でもMYH7が最多である。サルコメア関連遺伝子の異常は、LVNCの他、肥大型心筋症や拡張型心筋症など、他の心筋症の発症原因となり、表現型のオーバーラップが認められる。一方でLVNCを引き起こす遺伝子型は、サルコメア遺伝子の機能を重度に障害する変異が多く認められる報告があり、遺伝子型―表現型相関の特殊性を有している可能性がある。LVNCの特徴的な心筋構造から、主な病因として胎生期の左室心筋層の発生過程における緻密化の停止が推測される。しかし、LVNCのメジャーな病因であるサルコメア遺伝子産物の機能に関する研究は、心筋の機械的役割に関する解析が主で、胎仔心筋発生におけるサルコメア遺伝子の働きについては未知である。LVNCの表現型を部分的に再現した動物モデルは過去に複数報告されており、その多くは胎生期の心臓発生過程において心筋細胞の増殖能制御に関わる遺伝子群に関連したモデルである。これらの遺伝子は、ヒトLVNCの発症原因として、サルコメア関連遺伝子に比して低頻度であるが、胎生期の心筋層構築の詳細な分子制御機構の研究にとって非常に有用で、ヒト遺伝子解析とモデル動物およびヒトiPS細胞を組み合わせた統合的解析により、LVNCの発症メカニズムに関連するTGFβやNOTCHなどのシグナル経路が同定されてきた。今後、サルコメア関連遺伝子群の心臓発生における詳細な機能解析を基にした、胎生期の3次元的な心筋発生制御機構のさらなる解明と、LVNC発症に関わるシグナル経路の修飾による表現型への介入法の開発が期待される。