The 72nd Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

Presentation information

Theme Symposium

スポーツ文化研究部会 » 【課題A】グローバル課題の解決に向けてスポーツから何が提案できるか

International Development through Sport and Sustainability

Wed. Aug 31, 2022 2:00 PM - 3:50 PM 第2会場 (3号館4階401教室)

Chair: Masahiro Kawanishi (Doshisha University), Masayuki Enomoto (Shiga University)

[スポーツ文化-SA-2] A Japanese Perspective on Developing Countries Promoting Sports Development

A Case Study of Thailand's Rapid Economic Development in the 1990s

*Sagawa Tetsuya1 (1. Kanazawa University)

<演者略歴>
金沢大学人間社会研究域人間科学系教授。大妻女子大学人間生活科学研究所助手、金沢大学教育学部助教授を経て現職。筑波大学大学院体育科学研究科単位取得満期退学、教育学修士。専門はスポーツ社会学、スポーツ人類学。1986年からタイ、ミャンマー、ネパールなどにおいて子ども調査に従事。
私が初めて東北タイ調査に参加した1986年頃のタイ国は発展の途上にあり、前近代と近代が入り交じり、首都バンコクと地方には明瞭な都鄙差が認められた。東北タイの純農村、地方都市、バンコク都、そして日本という近代化・都市化水準の異なる地域勾配を研究枠組みとして、子どもの発育、生活、遊び・スポーツの研究を開始した。
 伝統的生活様式の残る純農村においてさえ新校舎に建て替えられ、教室にテレビやPCが導入された。学校対抗のスポーツ競技会が盛んに開催され、教育省体育局がスポーツスクールを設置し、タイ国におけるスポーツの地位が上昇した。途上国の中でいち早く経済発展を進めたタイでは、スポーツの普及と発展を急いでいるように見受けられた。その結果として、伝統菓子よりもスナック菓子を選ぶが如く、子どもたちは伝統遊びよりもスポーツを好むようになり、世代を越えて連綿と続いてきた伝統遊びを静かに消失させることになった。こうした国々に寄り添ってスポーツ開発を語るとき、「容易く伝統文化を消失させてよいのか」「世界共通となったスポーツだけに力を注ぐことでよいのか」と発信することが使命だと感じるようになっていた。