日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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学校保健体育研究部会 » 【課題A】 大学体育の授業をいかに良質なものにするか

学校保健体育研究部会【課題A】テーマ別シンポジウム/共生社会の創造に向けた大学体育授業の可能性―多様性理解の観点から―

2022年8月31日(水) 14:00 〜 15:50 第3会場 (3号館4階402教室)

コーディネーター:今宿 裕(作新学院大学)、大林 太朗(筑波大学)

[学校保健体育-SA-3] 多文化理解につながる有形・無形文化財を活用した大学体育授業の可能性

*細谷 洋子1 (1. 東洋大学)

<演者略歴>
博士(スポーツ科学)。早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学後、四国大学講師、リオデジャネイロ州立大学客員研究員を経て2018年より現職。ダンスや体操経験を活かし大学在学中にカポエイラを始め、国際大会優勝・入賞多数。エスニックスポーツの変容や教材化を研究する。本学会ではスポーツ人類学専門領域所属。
これまで発表者は、2008年から断続的に、有形・無形文化財を活用した大学体育授業(半期・集中・単発含む)を行ってきた。前者については、日本遺産有形文化財である四国遍路の一番札所から六番札所(約15㎞)までの歩き遍路体験を通じて、ウォーキングによる健康維持促進と、地域住民との触れ合い(お接待含む)による地域文化理解を深めることを目指した。一方、後者については、ユネスコ無形文化財のブラジル伝統格闘技カポエイラを扱った。授業では技術習得のみならず、既存の競技スポーツと異なる価値観で行われるカポエイラ固有の世界観の体験を通じた異文化理解促進を目指した。真の多文化・異文化理解とは一朝一夕の知識習得や体験だけでは決して成しえないが、体育授業における、自らの身体を介する短期的体験だけでも、異文化理解の入口として当該文化を内側から捉える好機となる。こうした体験は、受講生のその後における多文化をとらえる視点づくりに有益なのではないか。そのような観点から、両者のこれまでの実践事例を踏まえて、共生社会の創造に向けた大学体育授業の可能性について提案する。