日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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生涯スポーツ研究部会 » 【課題B】 生涯スポーツは・人・地域社会・産業といかに関連するか

生涯スポーツ研究部会【課題B】口頭発表①

2022年9月1日(木) 09:00 〜 09:47 第6会場 (2号館1階11教室)

座長:成瀬 和弥(筑波大学)

09:16 〜 09:31

[生涯スポーツ-B-02] eスポーツのオンラインチームプレーが引き出すオキシトシン分泌と友好性(介,生,心)

*松井 崇1、門間 貴史1、下山 寛之1、吉武 誠司1、髙橋 史穏1、松岡 弘樹1、峰 勇仁1、吉武 理香子1、内沢 彰子1、藤井 直人1、高木 英樹1 (1. 筑波大学 スポーツイノベーション開発研究センター)

オキシトシン(OT)は、親子の愛着などの社会関係形成や協力・信頼などの向社会行動を担う「絆ホルモン」である。最近、OT分泌が柔術で高まることから、武道やスポーツの教育・福祉・医学的効果を担う分子機構として注目される。私どもは、オフラインeスポーツ大会における初対面での一対一のプレーが勝敗によらずOT分泌と友好性を高める一方、オンライン大会での同様のプレーはそれらを高めないことを明らかにしてきた。本研究では、既知の他者との会話による協力を伴うチームプレーであればオンラインでもOTが分泌され、友好性の醸成に寄与すると想定し、これを検証した。 16人の若齢成人(男性14名、女性2名、23.5±3.8才)による8チームが、大学で開催したeFootball 2021(コナミデジタルエンタテインメント社)のチーム大会に自由応募で参加し、味方とボイスチャットしながら勝敗を決するまで約20分間プレーした。心拍数を常に測定しながら、プレー前、終了直後、30分後に唾液を採取し、OTをELISA法により定量した。併せて、気分をProfile of Mood States 2で評価した。 プレー中の心拍数は毎分約130拍まで上昇し、オフライン大会と同等の心身の負担度が確認された。唾液中OT濃度は勝敗に関係なく、プレー終了直後にプレー前よりも21.7%増加した。友好的気分はプレー終了30分後にプレー前よりも17.3%向上した。これらの増加率は、オフライン大会での増加率とほぼ同等の水準だった。さらに、OTの変化率と友好的気分の変化率との間には正の相関が確認された。 本研究により、eスポーツのオンラインチームプレーが、オフラインプレーとほぼ同等のレベルまでOT分泌と友好性を高めることが初めて明らかになった。チームプレーは、eスポーツの教育・福祉・医学的活用をオンラインでも可能にする重要な要素かもしれない。