09:32 〜 09:47
[生涯スポーツ-B-03] eスポーツプレー時の異なる座位姿勢がもたらす気分と精神作業特性(心)
前傾と後傾の比較
座位での精神作業中の気分やパフォーマンスは姿勢に左右される。近年発展が著しいeスポーツは座位でのプレーが一般的だが、その際の気分やパフォーマンスに及ぼす姿勢の影響は全く不明である。ヒトは意欲的な時に前傾姿勢を取る一方、逆に前傾姿勢を取ると意欲的にもなることから、前傾姿勢はeスポーツ時の意欲的なプレーに資する気分と精神作業特性を引き出すと想定し、これを検証した。 ビデオゲーム好きの若齢成人男性10名(24.1 ± 2.9歳)に、座面制御可能なゲーミングチェア(オカムラ社)による前傾/後傾座位の2条件で、eFootball 2021(コナミデジタルエンタテインメント社)を180分間プレーしてもらった。プレー前、開始後15、30、60、120、180分、終了30分後の7時点で、気分(VAS:疲労感、面白さ、二次元気分尺度:覚醒度)と実行機能(フランカー課題)を評価した。気分や実行機能に関係する前頭前野活動の間接指標となりうる瞳孔径も同様に測定した。 面白さと覚醒度は両条件とも30〜60分でピークに達したあと低下に転じたが、前傾条件が後傾条件よりほとんどの時点で高値を示した。疲労感は両条件ともプレー時間に応じて高まったが、その増加は前傾の方が早かった。フランカー課題の干渉時間は、前傾条件の60分時点でプレー前および後傾条件と比べて有意に短縮し、120分以降は元の水準に戻った。フランカー課題の正答率は、前傾条件のプレー中に後傾条件と比べて低下した。瞳孔径は前傾条件で120分以降に縮小し、フランカー課題の干渉時間と負の相関を示したが、これらの変化や関係は後傾条件ではみられなかった。 本研究により、前傾座位はeスポーツプレー時の面白さや覚醒度とともに情報処理速度を高めやすい姿勢であることが初めて確認された。一方、後傾座位は情報処理精度の維持に役立ち、120分以上の長時間プレー時に生じる認知疲労を緩和する可能性がある。