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[生涯スポーツ-C-01] 児童・生徒におけるスポーツ傷害リスク要因の定量化(発)
我々は先に、児童・生徒におけるスポーツ傷害リスクについて、スポーツに費やす時間と、1種目に限定する専門化の2つをリスク要因とみなして関連性を定量した。その結果、小学校低学年、同高学年、中学校、高校によって2要因の関連度が異なっていることを確認した。特に中学校と高校では両要因ともスポーツ傷害に有意に関連していなかった。その理由として、中学校と高校では90%以上が1種目しか実践しておらず、専門化によるリスクを検出できるサンプルサイズではなかったことが考えられた。また、スポーツ庁のガイドラインによって週あたりのスポーツ時間の上限が2018年に定められたことから、今後はスポーツ時間の影響が限定的になると思われる。これらを踏まえ、本研究ではスポーツ時間と専門化以外の要因も加味してリスク要因を定量することとした。三重大学教育学部の1~4年生に質問紙調査を2017年に実施し、有効回答を提出した569名 のうち、小学校~高校の1校種以上でスポーツ組織に所属したことがある484名を対象とした。校種ごとのスポーツ経験者が含まれる割合はそれぞれ61%、73%、93%、67%であった。質問紙ではスポーツ傷害(外傷と障害)の他、性、スポーツ開始年齢、全国・県大会出場経験、前校種での受傷経験も尋ねた。ポワソン回帰分析にて受傷者の出現割合比(prevalence ratio: PR)を算出したところ、小学校低学年では全要因が有意でなかった。小学校高学年ではスポーツ時間と専門化の交互作用が有意であり、同じスポーツ時間であれば複数種目の受傷者率が小さかった(PRと95%信頼区間は0.99, 0.98–1.00)。中学校では全国・県大会に出場している者で受傷リスクが高かった(1.07, 1.04–1.12)。高校では男性(1.39, 1.02–1.89)、全国・県大会出場(1.04, 1.01–1.08)、中学校での受傷経験(1.34, 1.00–1.77)の者で受傷リスクが高かった。以上のことから、リスク要因の関連性の程度は校種によって異なっており、校種ごとに対策を講じる必要性が示唆された。