日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題B】人々の生活に根ざした多様なスポーツ文化をいかに醸成していくか

スポーツ文化研究部会【課題B】口頭発表①

2022年9月1日(木) 09:00 〜 09:47 第9会場 (2号館2階22教室)

座長:周東 和好(上越教育大学)

09:00 〜 09:15

[スポーツ文化-B-01] 哲学「プレイ・アンド・エクササイズPlay and Exercise」序論(哲)

Taiiku、模倣、生き方

*林 洋輔1 (1. 大阪教育大学)

「スポーツ文化」における「文化」の実質を問い直す時宜である。「体育学にとって『文化』とは何か」との問いを立て、「プレイPlay」ならびに「エクササイズExercise」両概念が再考されるべきこと、また「体育Taiiku」概念を援用することで新たな文化哲学を構想しうる論拠ならびに以後の行論の端緒となる知が本発表で示される。
 「スポーツ文化」の実質を哲学より捉える際、この術語の基底詞である「文化」の実質を究める作業が不可欠である。しかし体育学では「スポーツ」への問いが体育学の全領域で強い関心の下に陸続するのに対し、「文化」への問いを体育学の独自性に拠りつつ掘り下げた議論は斯界研究史でも極僅少である。これまで深く問われ得なかった「体育学における『文化』」概念に斯界全領域の成果を踏まえつつ、議論の全体構想ならびに起点となる知が「体育の哲学Philosophy of Taiiku」を介して以下の通り示される。  
 着眼とする「プレイ」ならびに「エクササイズ」両概念について注記する。「スポーツ文化」の実質が問われる際、過去の議論にて例外なく参照されたのは遊戯論の古典である『ホモ・ルーデンス』および『遊びと人間』である。本発表では後者における遊びの分類の一である「模倣の遊び」としての「ミミクリ」に着眼し新たな議論を興す。というのも文化の起源は「遊び」に存する一方、その文化の生成と発展はすべて「模倣」に拠ると考えられるからである。他方で「模倣」によって或る文化が生成そして発展する際、その原動力となるのは目標の完遂を期した人間とその意志である。すなわち意志をもって「先人の生き方を模倣する」ところに文化が生成し発展するのであって、この有様を「エクササイズ」概念で説明づける。
 結論かつ討議の対象となる命題は次の通りである。文化とは「生き方の模倣に努めること」であり、構想された議論の外郭より帰結したこの命題の妥当性を聴講者と共に吟味する。