日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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競技スポーツ研究部会 » 【課題B】 競技スポーツにおけるコーチ養成をいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題B】口頭発表①

2022年9月1日(木) 09:00 〜 10:19 第3会場 (3号館4階402教室)

座長:田井 健太郎(群馬大学)

09:48 〜 10:03

[競技スポーツ-B-04] 空手の組手競技における先取点獲得の有効性(方)

東京五輪予選大会における日本代表選手のパフォーマンス分析を参考に

*大徳 紘也1、松本 剛志1、大石 健二1 (1. 日本体育大学大学院)

空手の組手競技は複数の動作からなる攻撃並びに防御技術により試合が展開され、有効な技を決めることによる得点数によって勝敗を競うスコア競技である。世界空手連盟(WKF)が2017年1月に施行したルールに「SENSHU(先取)」がある。組手競技における「先取」というルールは、同点で試合終了した場合に先取点を獲得していた選手を勝者と判定する内容である。つまり、組手競技における先取点は1点という得点に加え、勝敗の判定基準の一つでもある。このように先取点は他の得点とは異なる価値を有する得点であると同時に、優位に試合を展開していく上でも重要となる。先取点を獲得することにより得られる権利は、他競技にはないルールであり組手競技を戦術的に考察する上で重要と考えられる。 本研究では、先取点を獲得することがその後の試合展開にどのような影響を与えるのかを考察し、先取点の戦術的特徴について明らかにすることを目的とした。分析対象は、2019年から2020年に行われた東京五輪予選大会における日本代表選手の550試合とし、各試合のパフォーマンス分析を行った。分析項目は、先取点を含めた得失点の内容とその時間帯、先取点の獲得率、スコア変動の推移などを分析した。その結果、男女共に勝利した試合の70%以上が先取点を獲得していたことが明らかとなり、先取点を獲得した技の68%が突き技による得点であった。一方で、先取点を獲得したにもかかわらず、その後逆転を許し敗戦した試合の失点技では、上段への蹴り技が78%と顕著に高くなることが明らかとなった。 先取点の有効性を戦術として活かすためには、先取点獲得のための戦術理解と同様にその後の戦術をどのように組み立てるかが重要と考えられる。本研究における先取点獲得時の勝率は男女共に70%を超える値であったが、先取点の獲得率は50%強と比較的低い値を示した。勝率の高い戦術を検討するためには、先取点の獲得率を向上させる戦術プランが必要と考えられた。