日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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体育史/口頭発表①

2022年9月2日(金) 13:00 〜 13:35 第9会場 (2号館2階22教室)

座長:坂上 康博(一橋大学)

13:00 〜 13:35

[01史-口-01] 近代武道の国際化に関する一考察

ロサンゼルスにおける羅府弓道会の活動に着目して

*五賀 友継1 (1. 国際武道大学)

武道が海外へと紹介され、その普及及び展開が図られるようになったのは、19世紀の終わり頃からである。その嚆矢とされるのが柔道であり、嘉納治五郎が柔道の国際化を構想し、その実現に向けて積極的に海外への展開を図ったからであった。嘉納が志向した柔道の国際化は、柔術から柔道への転換期を考える上で、嘉納が行った柔術の「近代化」の一つとして指摘され、近代武道の形成過程における特徴的な動きとして捉えられている。
 それでは、柔道以外の武道種目においても、国際化は各種目における「近代化」の一つとして見出され、さらには「術から道」への転換を考える上での重要な動きとして捉えることができるのであろうか。
 本研究は、1908年頃から1941年の間、ロサンゼルスにおいて活動を行っていた羅府弓道会に着目し、近代における弓道の国際化について明らかにする。そして、羅府弓道会における弓道の国際化が、弓道の「近代化」さらには「弓術から弓道」への転換を考える上で、どのように位置づけられるのかを考察する。これらの結果を、特に柔道と比較検討することで、近代武道の国際化に関する歴史像の新たな一側面を描き出す。
 研究の結果、羅府弓道会は移民した日系人によって構成されており、積極的に現地の米国人社会に対する弓道紹介が行われていた。その背景には、弓道の紹介を通じて、日系人社会への理解を深めるといった意図があった。特に注目すべきは、弓道(日系人)とアーチェリー(米国人)の異種試合が多く行われていたことである。これは、アーチェリーに勝つことによって弓道の優位性を示し、その普及を図るというものではなく、日系人と米国人との間で一種の社交ツールとしての機能が働いていた。この点、柔道がレスリングなどと異種格闘技試合を行い、勝利することによって、その普及を図ろうとしたこととは異なる国際化の様相が見て取れた。その他の研究成果については、当日発表する。