日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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体育史/口頭発表②

2022年9月2日(金) 13:40 〜 14:15 第9会場 (2号館2階22教室)

座長:田原 淳子(国士館大学)

13:40 〜 14:15

[01史-口-02] ライプチヒ学派「トレーニング論」の変遷(2)

「準備」の内容について

*綿引 勝美1 (1. 鳴門教育大学)

スポーツトレーニングは、「狭義の意味で身体エクササイズ、つまり身体的な負荷を用いた身体的、スポーツ技術的、技術ー戦術的、知的、心理的、モラル的な準備」(1979年版)と定義され、「試合での最高パフォーマンスの達成にむけて選手を準備すること」が競技スポーツトレーニングの目標とされた。試合での最高パフォーマンスの発揮をねらいとして、さまざまな身体的エクササイズ(身体的な負荷・荷重)を手段として展開される行為がスポーツトレーニングだという理解である。こうした目的ー手段関係を背景にして、目的としての試合パフォーマンスの構造、手段としてのトレーニングエクササイズの構造、この2つに共通するパフォーマンス構造が分析の課題として浮上する。こうした考え方は、パフォーマンス論、トレーニング論、試合論の三本柱で構成されるトレーニング学(2015年版)にも受け継がれている。目的と手段の関係、要素と要素の関係(構造)、に着目することによって、試合パフォーマンスの構造分析(ゲーム分析)、そこから導き出される要因とその関係に関するパフォーマンス構造の分析、それらを再構成し、構造化するトレーニング構造分析が一体となったトレーニング学の実践理論の構築が狙われる。こうした関係や構造への注目は1979年版に明確にみることができる。1969年版では、以下のような要因の形成が課題として注目された。①身体的な準備、②スポーツ技術戦術的準備、③知的準備、④訓育、であった。1979年版になると、要因そのものというよりも、要因を統合したり、関連づける身体的心理的な諸機能の形成が課題として注目されるようになった。すなわち、①人格の質(構え・やる気・自信など)、②コンディションの準備(負荷耐性を含む)、③スポーツ技術ーコオーディネーションの準備(定型と変容性)、④戦術の準備、⑤知的準備、となった。