日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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体育史/口頭発表③

2022年9月2日(金) 14:20 〜 14:55 第9会場 (2号館2階22教室)

座長:佐々木 浩雄(龍谷大学)

14:20 〜 14:55

[01史-口-03] 朝日新聞社主催リズム体操祭に関する史的研究

リズム体操祭の創設とその変遷

*川端 昭夫1、來田 享子2、木村 吉次3 (1. 中京大学スポーツ科学部、2. 中京大学スポーツ科学研究科、3. 中京大学スポーツミュージアム館長)

本研究では、昭和22年から昭和29年に実施された朝日新聞社主催リズム体操祭の体育史的意義を考察する。資料は、朝日新聞等の関連記事、大会要項等を収集し、資料を基にリズム体操祭の創設と背景、大会の変遷、日本体操祭への移行などを検討した。研究の結果次の点が明らかになった。朝日新聞社は、戦後スポーツ行事(昭和21年中等野球大会等)を復活する中、昭和22年新憲法施行記念祝賀リズム体操祭を企画実施した。大会中憲法普及会会長の祝辞では、新憲法を貫く平和と自由の芽生え、健やかな身体の成長が説かれ、また朝日新聞の大会予告では、「新憲法を祝う体育祭典」と銘うち、「リズミカルなステップ、全演技とものびのび楽しく行われる」と体育の新傾向を強調した。大会は、戦前戦中の強制的鍛錬的体操の印象を払拭するため「リズム」を冠し、戦前の日本体操大会の主旨「国民の体位向上、精神作興」から転換し、「レクリエーション」などを目指した。大会は、阪急西宮球場を主会場とし、大阪・神戸など関西地区からの演技者を集めた。リズム体操祭は占領下ではあるが、戦前の日本体操大会と同様集団体操のメディアイベントとして復活し、初回・第2回憲法祝賀、第3回母の日、第4回アメリカ博など国家的文化的行事と合同企画された。昭和25年朝鮮戦争勃発に伴うGHQ占領政策の転換により、日本の再建、自立が求められた。その過程で、昭和25年学校祝賀行事の国旗掲揚・君が代斉唱の勧め・修身教育の復活など非軍事化・民主化政策に逆行する措置も執られた。一方、国民体育大会やラジオ体操の復活等もあり、体操の実施や普及の意識にも変化が生じ、後半リズム体操祭は拡大の方向を辿る。昭和29年には、リズムを冠しない日本体操祭が日本体操協会、東京都、朝日新聞社、文部省等の共催により実現した。大会は、体操の普及、市町村の体操振興、国民の体位向上を目指し、全国開催を企図していた。