日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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体育哲学/浅田学術奨励賞記念講演/スポーツ指導と暴力をめぐる思考―スポーツ科学は暴力の克服に資するのか―

2022年9月2日(金) 12:00 〜 13:00 第11会場 (2号館4階46教室)

司会:関根 正美(日本体育大学)

[00哲-レクチャー-1] スポーツ指導と暴力をめぐる思考

スポーツ科学は暴力の克服に資するのか

*髙尾 尚平1 (1. 日本体育大学)

<演者略歴>
日本体育大学大学院博士後期課程体育科学研究科修了。博士(体育科学)。日本体育大学体育学部助教。スポーツ指導における暴力に関する哲学的研究に従事。母校の法政大学第二高等学校でアシスタントコーチとしてバスケットボール部の指導に携わった経験を持つ。
指導者の暴力問題が取り沙汰されるとき、往々にして、スポーツ科学の活用が推奨される。こうした推奨は、自覚的であれ、無自覚的であれ、スポーツ科学が暴力の根絶に寄与しうるという前提に立っている。だが、この前提は適切だろうか。スポーツ科学は、暴力の対極に素朴に位置づけられるものだろうか。われわれは、すでに、高度な科学技術が暴力と手を結んだ歴史を知っている。スポーツ科学に暴力の根絶を託す思考は、なにほどか性急さを抱えているように思える。こうした違和感に端を発し、発表者は、2020年に『暴力指導の超克へ向けたスポーツ科学の定位』を発表した。本発表では、この論考にもとづき、スポーツ科学の活用が暴力を克服するための術としていかなる意義と限界を有するのかを考察する。当日は、以下の3つの問いを中心に議論を展開する。①「指導者がスポーツ科学を用いる」とは具体的にどのような事態を指すのか。②スポーツ指導における暴力とはなにか。③スポーツ科学の活用は暴力の克服にいかに資するのか。本発表では、上記に加え、『暴力指導の超克へ向けたスポーツ科学の定位』以後の発表者の問題意識についても報告する。