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[15政-口-01] スポーツ政策の中央地方関係を位置づける
財政支出の分析を通して
近年の日本の潮流である「地方分権」という理念は、自治体が地域の実情に即したスポーツ政策を展開することを要求する。他方で、スポーツ環境のナショナルミニマムを保障するためには、国の指示のもとで国と自治体が一体となる側面も求められる。ここに、スポーツ政策をめぐる国と自治体の関係(中央地方関係)を問う必要性が認められる。そこで本研究は、国と自治体のスポーツに関する財政支出の分析を通して、日本のスポーツ政策における中央地方関係の推移を位置づけることを目的とした。具体的には、1970年代から現在までの国と自治体のスポーツ振興歳出の額や構成等を把握し、①国と自治体の活動量、②自治体に対する国の関与の影響力という2つの視点から分析した。 その結果、①国と自治体の総歳出額の比率は概ね4対6であるのに対し、スポーツ振興歳出では概ね0.5対9.5であり、活動量の中心は自治体(その中でも市町村)であること、②この比率は常に自治体が90%以上を占め、歴史的には1970年代の93%前後から1990年代の97%前後まで漸増していること、③スポーツ施設整備に限定されるが、補助金に頼らない自治体の歳出、すなわち単独事業費の割合が、1970年代には50%台だったものが1980年代後半に増大し、1990年代には95%以上となったこと等が明らかとなった。 先行研究に倣い、「活動量」を集中—分散の指標とし、「国の影響力」を分離—融合の指標とすると、以上の結果から、本研究の対象期間において日本のスポーツ振興政策は分散・分離が進んだといえる。今後の研究では、特に大きな変化がみられた1980年代の市町村の単独事業費の増加に焦点を当て、それがなぜ生じたのかを制度や政策過程の視点から明らかにしていきたい。