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[15政-口-02] フランスにおけるスポーツ団体保険制度の課題
スポーツ活動中の事故の損害の補償及び損害賠償をめぐる紛争防止のために、スポーツ保険制度等のスポーツ事故補償政策の検討は重要な政策課題となっている。フランスにおいては、法律によりスポーツ活動中の事故の補償のために保険加入が義務付けられてきた。特に、スポーツ法典第L321-5条によって認可されたスポーツ連盟は加盟団体及び会員を補償する団体保険契約を締結できることが定められている。このスポーツ団体保険契約は、責任保険及び傷害保険などがセットになった総合保険として発達し、中央競技団体が締結する例がある。そこで、本研究は、このフランスにおいて導入されている国内スポーツ連盟に対するスポーツ団体保険制度を研究の対象とし、契約の内容および制度の構造を明らかにし、当該制度の評価及び課題の分析を行うことを研究の目的とした。制度の内容については、フランス柔道連盟などの国内スポーツ連盟が実際に契約し実施している保険契約の対象、補償内容、保険料、補償金額、特約などを調査した。制度の構造については、特に団体保険契約を締結する法的義務について、歴史制度的な背景理由を、関連判例や司法改革の動向とともに考察した。また、スポーツ団体がスポーツ団体保険を実際に実施する上での問題や課題について調査した。調査の結果、特に団体保険料の高額化などの問題が明らかとなった。当該制度の法的課題については、無過失責任の適用の放棄などの判例法の影響を考察した。そして、以上の考察の結果を踏まえて、今後のスポーツ保険制度や事故補償政策の在り方を検討し、政策提言を行った。特に事故の発生頻度や影響度はスポーツ種目ごとに違いがあるが、重大事故が生じる確率が高いスポーツについて、管轄する国内スポーツ団体だけによって保険対策を講じることには限界があることが結論として指摘できる。