15:12 〜 15:27
[11教-口-07] 日本語を母語としない保護者との体育に関連したコミュニケーションにおける小学校教員の経験
近年、我が国では公立小学校における国際化が加速し、日本語を母語としない児童の人数が増加傾向にある。その中で、文部科学省(2019)は、日本語を母語としない児童の多様な背景に応じた指導や学習環境を提供するために、日本語を母語としない保護者(以下「保護者」と称する)との対話の必要性を示した。特に、体育においてはその教科の独自性から文化や宗教への配慮や安全な学習環境の確保が強く求められるため、学級担任をしている小学校教員は保護者とコミュニケーションを促進し、体育に関連した児童のニーズを把握する必要がある。しかし、保護者とのコミュニケーションにおいては、言語や文化の違いによる要因が課題として考えられる。今後、体育において児童の多様な背景に応じた学習環境を提供していくためにも、保護者とのコミュニケーションに関して、教員自身の熟達化を促していく必要がある。よって、本研究では、教員の熟達化のプロセスに焦点を当てたKatz (1972)が提唱したTeacher Development理論を研究上の枠組みとし、公立小学校担任教員の体育に関連した保護者とのコミュニケーションの経験を明らかにすることを目的とした。本研究は、探索的ケーススタディ法を用いた質的研究である。小学校教員6名を対象に、質問紙調査および半構造化面接法、フォローアップe-mailにてデータを収集した。分析は、継続的比較分析法を用いて行った。結果として、「緊急時対応における課題」、「コミュニケーション方法の工夫」、「異文化理解の重要性」の3つのテーマが明らかになった。小学校教員が体育に関連した保護者とのコミュニケーションの中で、様々な課題に直面していた。そのため、教員が直面している課題を解決していくためにも、小学校教員の熟達化の促進を目指した教師教育プログラムの開発や教員向けの支援の拡充が求められる。