[07発-ポ-11] BTTモデル(Bock,1994)による発育曲線の特徴による発育急進期開始年齢の検討
【緒言】Preece and Baines(1978)は、発育急進期開始年齢(ATO)を思春期急増期の直前の発育加速度が0の時、すなわち最小発育速度出現年齢(APMV)と定義している。しかし長野ら(2022)は、日本人の発育曲線をBTTモデルを用いて推計したところ、最大発育速度年齢(APHV)より随分と早期にAPMVが出現し、ATO=APMVとすることが必ずしも適切でないことを示唆した。特に思春期不器用の発現との関わりを考慮すると、ATOの同定は必要である。本研究では、BTTモデルを用いて日本人の発育曲線を推計し、特にAPMVと APHVの発育最大加速度などの関係から、ATOの決定方法について提案することを目的とする。【方法】体育系学部に所属する大学生男子1136名、女子1097名を対象に6から17歳までの身長データに対しBTTモデルを用い、APMV、APHVならびに最大発育加速度 を算出した。また、早期にAPMVが出現する者の発育速度曲線の特徴を検討した。【結果および考察】BTTモデルにて算出したPMGVは、男子9.19±1.00歳、最小値3.56歳、最大値11.63歳、女子では7.95±1.07歳、最小値3.91歳、最大値11.34歳であった。男子のPMGPが5歳以下の者の割合は、1.93%(22/1136名)、女子においては4歳以下の者の割合は2.64%(29/1097名)であった。これらの発育特性を有する者の発育曲線は、APMVの出現が幼児期であり、それ以降発育スパート開始までは速度が漸増しているため、早期のAPMV出現となった。この特徴を示す者でも、APHV直前に急激に発育速度が上昇する局面が観察される。従ってこの上昇局面をATOとして定義することが必要であると考えられる。一つの方法として最大発育加速度に対して、一定の割合(例えば最大加速度の3%あるいは5%)の出現年齢、またはその数ヶ月前をATOとすることが適切でることが考えられる。