[05バ-ポ-09] 風洞実験による卓球ボールの空力特性計測
卓球のボールは小型軽量であり、ラケットに貼付されているラバーの性質によってボールに回転がかかりやすいため、卓球は回転のスポーツと言われている。しかし、卓球ボールの回転は速度やコースと異なり、肉眼で十分に観察できないため、選手の経験に基づいて分析されることがほとんどである。また、卓球ボールの軌道は打球後に抗力や揚力などの空気力によって変化する。卓球競技は空力特性に関する研究が少なく、プラスチック製卓球ボールにどのような空力特性が作用するのかを示した研究は見受けられない。そのため、プラスチック製卓球ボールの空力特性が分かれば、卓球競技に生かせる可能性があると考える。そこで、本研究では、風洞装置と1分間に8000回転できる卓球ボール回転装置を用いて、プラスチック製卓球ボールの空力特性を明らかにすることを目的とする。実験では卓球ボール回転装置を風洞装置内に設置し、卓球ボールに風を当てた。卓球ボールに風が当たることでボールが多少揺れるため、その揺れを卓球ボール回転装置に取り付けられている2つのロードセルと2本のワイヤーによりワイヤーの張力を計測した。次に計測した張力を卓球ボールに加わる抗力と揚力に変換した。張力を抗力と揚力に変換した後に抗力、揚力、風速、卓球ボールの回転数をそれぞれ抗力係数、揚力係数、レイノルズ数、スピンパラメータに無次元化した。揚力係数はレイノルズ数を固定してスピンパラメータを増加させると増加、減少、増加の形を示し、抗力係数も同様の傾向が見られた。揚力係数の減少にはマグヌス力が働く方向が逆転する負のマグヌス効果が関わっていると考える。この現象はボール周りの剥離点の移動が原因とされているため、今後の研究で煙を使った卓球ボール周りの空気の可視化実験を行う必要があると考える。