[08測-ポ-12] 異なる立ち座り動作を用いた複合的運動の介入が高齢者の静的および動的バランスに及ぼす影響
本研究では、椅子からの異なる立ち座り動作を用いた複合的運動が静的および動的バランスに及ぼす影響を検討した。対象者は60~87歳(70.0±6.5歳)の健康な高齢男女28名で、性別と年齢により椅子から素早く立ちあがるグループ(QU群:15名)、ゆっくり座るグループ(SD群:13名)の2群に無作為に割り付けた。介入前後の測定は、静的バランスは重心動揺計を用いた開眼および閉眼条件による立位姿勢時の足圧中心動揺(COP)パラメータ(速度と面積変数)、動的バランスは開眼にて重心軌跡測定器の上で閉足直立姿勢をとらせ、メトロノームの合図(往復6秒)でCOPを前後と左右方向に移動させた際の最大移動到達距離と逆方向の偏差とした。運動介入は10週間とし、月2回の運動教室を含む週3回の自宅運動を行わせた(計30セッション)。椅子からの立ち座りは、QU群は素早い立ち上がり運動を10回×3セット、SD群は立位から5秒かけてゆっくり座る運動を10回×3セットとし、この運動に加えてスロージョギング(3分×2~3セット)、下肢や体幹の柔軟運動(8~10種目)、各種バランス運動(6~8種目)も合せて行わせた。椅子を用いた筋力運動以外は同じ運動とした。両群には運動マニュアルを配布し、実施状況は日誌に毎回記録させた。その結果、運動介入による継続率は96.4%、教室参加率は66.7~100%であった。介入期間中の運動実施数はQU群が28.2±3.0セッション、SD群が31.2±6.9セッションと両群に差はなかった。繰り返しのある二元配置分散分析の結果、静的バランスに影響はなかったが動的バランスの前後方向に移動させる際の左右の偏差のみ有意な交互作用が認められた。各要因の単純主効果を検討したところ、QU群の前後に有意な単純主効果が認められ、事後検定の結果、前後移動時の左右の偏差は有意に減少した(P=0.011)。以上のことから、異なる立ち座り動作を用いた運動介入は動的バランスにのみ限定的な影響を与える内容であった。