[09方-ポ-28] バレエ・ピルエットにおける身体の傾きと身体各部の変動について
回転動作は、あらゆるダンスジャンルに含まれるが、なかでもクラシックバレエのピルエットは、重要な回転技法の一つである。女性ダンサーの場合、通常2~3回転のピルエットを用いることが多いが、3回転のピルエットは、プロのダンサーでも容易ではなく、試行錯誤によって習得するダンサーも少なくない。本研究では、プロのダンサーの2回転と3回転のピルエットにおける身体各部の動きの個人間のばらつきと身体の揺れとの関係を検討することを目的とした。対象者は、13人のプロの女性クラシックバレエダンサー(年齢:27.3 ± 3.4歳,身長:1.60 ± 0.03 m,体重:46.5 ± 2.5 kg,経験年数:22.7 ± 3.2歳)で、コンクールにて上位入賞経験をもつソリスト以上であった。2回転および3回転のピルエットを実施している対象者の動作を3次元動作解析システムカメラ(Qualisys , 250 Hz , 12台)を用いてとらえ、得られた3次元座標データから身体各部の方向角の平均と標準偏差、身体の揺れの指標として身体の傾き角などを算出した。2回転と3回転のピルエットでは、下腿、大腿、体幹の方向角のばらつきが小さかったことから、これらの部分の動作には、共通性が高いと考えられた。回転中のダンサーの身体の傾きとばらつき(標準偏差)が大きく共通性の低い身体各部分の変動をみると、準備局面における足と回転局面における右前腕および上腕が身体の傾き角に影響しているようであった。これらのことより、習得が難しいとされる3回転のピルエットでは、左の下腿、大腿、体幹よりも左の足および右の前腕、上腕にダンサー間において動作のばらつきが大きく、これらの部分が身体の傾きに影響をしていると考えられる。