[03心-ポ-05] 中学校体育における動機づけ雰囲気と学習意欲の因果関係の推定
中学校3年間における縦断的データからの検討
本研究では中学校の3年間にわたり9時点で収集された9波のパネルデータをもとに、体育における学習意欲と動機づけ雰囲気との因果関係の推定を行うことを目的とした。大学附属中学校2校に在校する生徒271名を対象に、体育授業における動機づけ雰囲気測定尺度(伊藤ほか、2013)と体育における学習意欲検査(西田、2013)からなる調査票を、2017年5月(1年生)から2020年2月(3年生)までの3年間に合計9回実施し、回答が完全であった208名(男子96名、女子112名)を最終分析に用いた。各得点の変化と得点間の因果関係を検討する統計手法には潜在曲線モデルを採用した。まず各尺度の平均値および標準偏差を算出し、3年間の経時変化を検討した結果、動機づけ雰囲気の熟達・協同・成績雰囲気のいずれの得点も3年間における変化には個人差があることが確認された。また熟達雰囲気は集団全体で低下し、一方で成績雰囲気は向上することが示された。続いて、学習意欲に関しては、意欲的側面(学習ストラテジー、学習の価値、学習の規範的態度、困難の克服、運動の有能感)ならびに回避的側面(緊張性不安、失敗不安)のいずれの得点も3年間における変化には個人差があることが確認された。また運動の有能感は集団全体で向上し、学習の規範的態度、緊張性不安、そして失敗不安は集団全体で低下することが示された。次に動機づけ雰囲気の各雰囲気の得点と学習意欲の各下位尺度の得点との因果関係について、両得点の潜在成長曲線モデルを組み合わせたモデルによって推定した。主な結果として、熟達雰囲気や協同雰囲気が学習意欲の意欲的側面(学習ストラテジー、学習の価値、学習の規範的態度、困難の克服)の向上に影響を及ぼすことが明らかとなった。また成績雰囲気得点は運動の有能感の向上、回避的側面(緊張性不安、失敗不安)の向上に影響を及ぼすことも明らかとなった。