日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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体育心理学(奇数演題) ポスター発表

2022年9月2日(金) 10:00 〜 11:00 第一体育館バレーボール1 (第一体育館バレーボール)

[03心-ポ-17] 女性スポーツ競技者の感情調節と食行動異常傾向の関連

*相羽 枝莉子1、松田 晃二郎2、杉山 佳生3 (1. 長崎国際大学、2. 熊本学園大学、3. 九州大学)

女性スポーツ競技者を苦しめる深刻な精神疾患の一つに、摂食障害がある。摂食障害の主症状として、過度な食事制限や過食などの持続的な「食行動異常」があるが、これらは摂食障害の発症に先行するリスク要因でもある (Jacobi et al., 2004)。一般的に摂食障害を発症すると、その他の精神疾患を併発することが少なくないため、摂食障害と密接に関連する食行動異常の内的要因を解明することは、メンタルヘルスの維持・向上を図る上で極めて重要である (村山, 2021)。先行研究では、食行動異常と関連する内的要因として「感情調節」が注目されている。例えば、非臨床サンプル (Haynos et al., 2018) やスポーツ競技者 (Benau et al., 2020) を対象にした研究では、「感情制御困難性」が食行動異常のリスク要因になり得ることが報告されている。また、感情を調節する方略の一つである「反芻」を行いやすい人ほど、食行動異常が認められやすいことが明らかになっている (村山, 2021)。このように、摂食障害を考える上では、食行動異常と感情調節の関連を検討することが重要であるが、女性のスポーツ競技者を対象にそれらの関連を検討した研究は、国内ではほとんど報告されていない。国外においても、食行動異常の心理社会的リスク因子として、感情調節に関する知見の蓄積が必要であるとされている (Benau et al., 2020)。そこで本研究は、女性スポーツ競技者を対象として、感情調節と食行動異常の関連を検討することを目的とした。
本研究ではWeb調査を実施した。女性の成人スポーツ競技者226名に回答を求め、分析対象者は159名 (平均年齢30.87±9.47) であった。調査に用いた尺度は、新版食行動異常傾向測定尺度 (山蔦ほか, 2016)、 日本語版感情制御困難性尺度 (山田・杉江, 2013)、 感情抑制傾向尺度 (樫村・岩満, 2007) であった。結果として、食行動異常傾向に対して、感情制御困難性およびポジティブ感情を抑制する傾向が、有意に関係している可能性が示唆された。