[03心-ポ-21] スポーツ場面における身体特異的な意思決定バイアス
スポーツにおける正しい意思決定はパフォーマンスの向上に繋がると考えられ、現在でも意思決定に関するメカニズムは様々な視点から研究が行われている。身体性認知に関する研究では、人を選好する際には流暢性の高い利き手側の人物を選びやすくなるなど、四肢の流暢性の程度とポジティブ/ネガティブという感情価に関連があることが示されている。本研究では、このような身体特異的な意思決定バイアスがスポーツの意思決定場面でも生じるのかについて検証することを目的とした。具体的には、サッカーのPK場面においてキッカーの左右の脚の流暢性が、キーパーの位置に基づくシュート方向の意思決定に影響するかを検討した。参加者は大学サッカー選手4名とした。実験課題では、壁にサッカーゴールとキーパー(キーパーの位置を中心から0%・0.5%・1.0%・2.0%・3.0%・10%左右に移動させた11条件)を投影し、参加者には決まると思う方向にシュートするように教示した。また、四肢の流暢性は手と脚のタッピング課題によって評価し、各参加者の感情価と四肢の結合はポジティブ/ネガティブ単語に対する四肢の反応時間の結果から評価した。結果として、四肢の流暢性と感情価に関連 (バイアス) があった選手は、狭い空間 (キーパーの位置がゴールポストに近い方向) に対してでも、シュート方向の選択が流暢性の高い脚側に偏った。一方、流暢性と感情価に関連が見られなかった選手では、シュート方向のバイアスは認められなかった。以上の結果から、流暢性と感情価の結合には個人差があること、スポーツ選手の意思決定には、環境情報だけでなく、自己の身体情報に基づく感情価も利用されていることが示唆された。