[03心-ポ-23] バドミントンにおける素早いリターン時にみられる注視行動の特徴
バドミントンでは、相手のショットに対してごく短い時間で反応することが求められ、視覚情報が重要な役割を有していることが考えられる。これまでバドミントン選手を対象とした研究では、相手のサーブに対するリターンや比較的時間的な制約が少ない中でリターンを行う際の注視行動の特徴が調べられてきたが、相手からの速いショットに対して時間的制約が大きい中で実際にリターンする際の注視行動の特徴については十分な検討がなされていない。そこで本研究では、バドミントン選手において、相手のショットに対し素早いタイミングでリターンを行う際にみられる注視行動の特徴について検討することを目的とした。 大学バドミントン部に所属する選手8名(バドミントン選手)と、体育系学部に所属するバドミントン競技経験のない大学生8名(非競技選手)が本研究に参加した。参加者は眼球運動測定装置を装着した状態で、バドミントンコートの前衛ポジションに位置し、相手からの素早いショットに対して返球を行った。その際、1名の相手から繰り返し出されるショットをリターンする条件(ノック条件)と、実際にダブルスのゲーム形式でラリーする際に前衛ポジションに位置し、相手からのショットに対して適宜リターンする条件(ラリー条件)を設定した。相手のショットのインパクト時点を基準とした参加者の視線移動開始のタイミング、およびインパクト時点における視線方向について分析した。 その結果、いずれの条件でも、バドミントン選手は非競技選手に比べ、相手ショットのインパクト時点を基準とした視線移動開始のタイミングが早く、インパクトよりも早いタイミングで視線移動を開始している試行もみられた。また、インパクト時点における視線方向は、バドミントン選手ではよりラケット面付近に向けられていた。以上のことから、バドミントン選手は素早いリターン時に予測をふまえた視線行動がみられることが示唆された。