日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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体育心理学(偶数演題) ポスター発表

2022年9月2日(金) 11:00 〜 12:00 第一体育館バレーボール1 (第一体育館バレーボール)

[03心-ポ-24] ビデオ・セルフモデリングにおける映像の自他選択の組合せがキータッピングの学習に及ぼす影響

*廣光 佑哉1,2、石倉 忠夫2 (1. 同志社大学研究開発推進機構、2. 同志社大学スポーツ健康科学部)

ビデオ・セルフモデリング(VSM)とは、学習者自身の過去の成功行動を観察する事で後の行動変容を促す観察学習の技法である。本研究では、自己選択と他者選択、そして両方を組合せて作成したVSMの観察が運動学習へ及ぼす影響を検討する事を目的とした。
 キータッピング課題の経験がない右利きの45名の参加者を対象に2日間の実験を実施した。本課題は、指定された順序・時間通りになるよう左手人差し指でキーを押す課題である。各参加者は自己選択群(SC)、他者選択群(OC)、そして自己・他者選択群(SOC)に無作為に分類された。1日目はまず、1ブロック10試行の実験課題のテストブロックを実施した。各試行の後、その試行が成功したか否かを二択で回答させ、運動パフォーマンスの結果をフィードバックした。1ブロック終了後、SCは参加者自身が最も成功したと感じる映像を4つ選ばせ、OCは実験者が最も成績の良い映像を4つ選んだ。そして、SOCは1つのみ参加者が、他3つは実験者が映像を選択した。これらの映像からVSMを作成し、視聴させ、参加者に映像に対する認知的一致を評価するよう求めた。このテストブロックから認知的一致の評価までの手続きを4回繰り返し行い、1日目を終了した。翌日、保持テスト(1日目と同じパターン)と転移テスト(1日目と異なるパターン)を10試行ずつランダムな順序で実施した。なお、2日目は結果のフィードバックを行わなかった。
 分析の結果、1日目の運動指標と認知的一致に群間差はなかった。2日目の保持テストにおいてSCとSOCはOCと比較して有意に安定したパフォーマンスを示した。さらにSOCはOCより正確かつ安定したパフォーマンスを示した。以上の結果から、映像を選択するための最適な方法は、映像を学習者に自己選択させる量ではなく、選択という行為や自他選択の組合せが学習者の記憶保持に寄与する事を示唆した。