[03心-ポ-32] 大学生アスリートの省察・反芻が競技生活の行動プロセスに及ぼす影響
自己に注意を向けやすい性質として反芻と省察があり(Trapnell & Campbell、1999)、それらはアスリートのメンタルヘルスに影響を与えることが明らかにされている(山越・土屋、 2017)。また、アスリートが大会で優秀な成績を収めるには、中・長期的に競技力向上に必要な行動を積極的に継続することが求められている(Gardoner & Moore、2009)。しかし、アスリートにおける反芻と省察が競技力向上を目指す行動プロセスに及ぼす影響については未だ検討されていない。そこで本研究では、大学生アスリートにおける反芻と省察が競技生活の行動プロセスに及ぼす影響について検討した。 今回は、A大学体育専攻学生291名(男性159名、女性132名)を対象にオンライン調査を実施した。調査対象者には、Rumination-Reflection Questionnaire日本語版(高野・丹野、2008)の下位尺度である反芻と省察、Values Clarification Questionnaire(齋藤ほか、 2017)の下位尺度である動機づけ、行動継続、強化の自覚について回答させ、競技生活の行動プロセスを評価した。反芻と省察の得点を独立変数、動機付け、行動継続、強化の自覚の得点を従属変数とし、調査対象者を性別、競技スキル(オープンスキル群、クローズドスキル群)、競技レベル(上位群、下位群)に分けて重回帰分析を行った。 その結果、すべての調査対象者において省察は動機づけ(p<.001)、強化の自覚(p<.001)と行動継続(p<.01)に正の影響を及ぼした。反芻は動機づけに影響を及ぼさなかったが、 行動継続(p<.001)と強化の自覚(p<.001)に負の影響を及ぼした。また、男性群は反芻が行動継続と強化の自覚に影響を及ばさないこと、クローズドスキル群は、省察が動機づけに影響を及ぼさないこと、競技レベルの下位群は反芻が行動継続に影響を及ぼさないことが明らかになった。以上のことから、反芻と省察はアスリートの競技生活の行動プロセスに影響を及ぼすことが明らかになった。さらに性別、競技スキル、競技レベルによって反芻と省察が行動プロセスに及ぼす影響は異なる可能性が示された。