[03心-ポ-34] Virtual Reality環境下におけるサッカー選手の状況判断能力と視覚探索方略との関連
サッカーでは、状況が多次元的に変化する中で適切な視覚探索により状況を認知し、プレーを決定しなければならない。状況判断および視覚探索研究の多くは、リアリティーを重視したフィールド実験もしくは内的妥当性を重視した実験室実験を採用している。しかし、近年はVirtual Reality(VR)技術により、リアリティーと内的妥当性の担保が可能である。したがって、本研究ではVR環境下におけるサッカー選手の状況判断能力と視覚探索方略との関連を明らかにすることとした。本研究では、サッカー経験群7名(男性7名、平均年齢24.3±2.3歳)と未経験群8名(男性6名、女性2名、平均年齢23.9±1.3歳)を分析対象とした。課題にはディフェンス視点の1対1映像を用い、実験参加者にはオフェンスが突破する方向をキー押しにより回答させた。実験参加者にはVRヘッドセットを装着させ、映像呈示と同時に注視行動が記録された。対応のないt検定の結果、経験群は未経験群よりも反応時間が有意に速い傾向があり、高い効果量が示された(p <.10, r=.51)。先行研究ではサッカー熟練者の情報処理能力の優位性が報告されており(e.g., 松竹ほか,2018)、本研究においても、経験者の中枢情報処理能力の高さが示された。続いて、注視時間では、経験群は未経験群よりもKNEE(p <.10, r=.57)およびFOOT(p <.10, r=.66)を長く注視している傾向があり、高い効果量を示した。サッカーの1対1場面においてディフェンス選手は相手の膝下からボールにかけて注視していることが報告されており(Williams et al., 1998)、本研究においても、経験者はKNEEからFOOT付近を注視する特徴的な視線行動が示された。以上のことから、サッカー経験者は特徴的な視覚探索により、素早い反応を実現していたものと推察される。