日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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アダプテッド・スポーツ科学 ポスター発表

2022年9月2日(金) 13:00 〜 14:30 第一体育館バレーボール3 (第一体育館バレーボール)

[13ア-ポ-01] 視覚障害者におけるバランスボールを活用したトレーニングによる心理的効果およびバランス能力への効果

*松浦 佑希1、三枝 巧2 (1. 宇都宮大学 共同教育学部、2. 山形大学 地域教育文化学部)

視覚障害者は、運動能力に関わる能力の発達に遅延が見られ(Sarimski,1990)、特に日常的に行う歩行では、様々な姿勢や歩行スタイルとともにバランスの喪失が見受けられる(Arslantekin,2014; Tuncer et al.,1999)。これらバランスの喪失は怪我にも繋がり、社会生活に悪影響を及ぼすことからも(Ray et al.,2008; Montarzino et al.,2007)、バランス能力を高めることは重要であると考えられる。 そこで、本研究では、視覚障害者のバランス能力を高めることを目的に、バランスボールを用いた動的バランス能力を高めるトレーニングプログラムを考案および実施し、その心理的な効果とバランス能力について検討した。プログラムは、松浦ほか(2018)のバランスボールを課題とした運動指導方法を参考に作成した。方法として、就労継続支援A型施設で働く視覚障害者8名(男性4名、女性4名、平均年齢47.50±16.27歳)を対象に、考案した1回5分程度のトレーニングを週に2回のペースで8週間、計16回実施し、各トレーニング前後の気分の変化、8週間のトレーニングプログラム前後の動的バランス能力の変化を測定し、さらにトレーニング効果とプログラムの内容の評価を半構造化面接によって得た。その結果、気分の変化については、トレーニング後に気分の快適度が有意に高まること(p < .001)、動的バランス能力については、ファンクショナルリーチテストにおいて、トレーニングプログラム前後で有意な向上が見られた(p < .001)。また、プログラムの評価として、対象者全員から楽しく意欲的に、そして安心して安全にトレーニングに取り組むことが可能であったとの回答を得た。また、一部の対象者からは、日常生活での転倒の減少、腰痛の改善といった報告が得られた。以上のことから、本研究で考案された視覚障害者のためのバランストレーニングについて、心理面およびバランス能力の両面からその有効性が確認された。