[10保-ポ-03] 授業見学者を想定した暑熱環境での模擬的日射暴露の有無が体温調節反応におよぼす影響
本研究の目的は暑熱環境での模擬的日射暴露の有無が体温調節反応におよぼす影響を明らかにすることとした。実験対象者は11名の若年男性(年齢22±2歳, 身長169.9±3.1 cm, 体重59.6±8.1 kg, 体脂肪率13.8±5.4%, 最大酸素摂取量, 43.0±5.9 ml/kg/min)であった。実験条件は日射有条件(室温, 29 ± 1 °C, 相対湿度, 62 ± 2%, 黒球温, 45±1 °C)と日射無条件(室温, 29±1 °C, 相対湿度, 61±3%, 黒球温, 29±1 °C)であり、各々の環境にて1時間の椅座位安静中の体温調節反応を測定した。実験中は直腸温、皮膚温、前腕部の局所発汗量と皮膚血流量、心拍数、血圧、暑さ感覚と温熱的快適性を測定した。また実験前後の体重変化から体重減少量を算出した。その結果、暑熱暴露終了時の直腸温の変化は日射有条件(0.1±0.2 °C)が日射無条件(-0.1±0.1 °C)に比較して有意に高かった(p<0.001)。また、体重減少量(日射有条件; 0.4±0.2 kg, 日射無条件; 0.1±0.1 kg)や心拍数や局所発汗量、皮膚血流量の変化率も日射有条件が日射無条件に比較して有意に高かった(それぞれ, p<0.05)。暑さ感覚や温熱的快適性は日射有条件が日射無条件に比較して有意に高かった(それぞれ, p<0.05)。血圧は条件間で有意な差はなかった。これらのことから暑熱環境で日射に曝された場合にはそうではない場合と比較して体温の上昇度合は軽度で済むものの、その代償としてより脱水することが示唆された。したがって、日射が直接当たる暑熱環境では安静であっても積極的に飲水するなどの脱水予防対策を講じる必要性が示唆された。