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[スポーツ文化-A-03] 1964年東京大会聖火リレーの記録と記憶(哲)
オリンピック・ムーブメントの日本的受容と展開について
本研究の目的は、1964年東京大会聖火リレー関連資料の分析を通してオリンピック・ムーブメント(以下、OMとする)の日本的な受容の一側面を明らかにすることにある。日本におけるOMの受容と展開については、1940年、1964年東京大会と東京2020大会との連続性に着目しメディア史の立場から論じた浜田(2018)の研究やピエール・ド・クーベルタンや嘉納治五郎に注目した先行研究がある。例えば、小路田ら(2018)はクーベルタンや嘉納に焦点を置くことによって源流をたどりながら、オリンピズムの理想と現実の乖離を指摘する。オリンピック競技大会は、その空間的時間的拡がりを考慮したとき、オリンピズムを具現化するものを開催都市にもたらすことができるのだろうか。本研究では、OMそれ自体に対する評価とオリンピズムの理想に関する検証を念頭に、1964年東京大会聖火リレーに着目する。1964年東京大会は当然ながら日本におけるOMのターニングポイントとなったわけであるが、吉見(2020)が指摘するように「国土全域を巻き込む巨大なナショナル・イベントに仕立て上げられた」聖火リレーの記憶は、日本におけるOMの受容や展開に関しても影響を与えたと推察される。本研究では、特に「東京オリンピック:オリンピック東京大会組織委員会会報(1960-1964)」や東京都内区市町村発行の広報誌、聖火リレーに関する記念誌等の記録を分析することによって、1964年東京大会聖火リレーの実態を明らかにする。1964年東京大会聖火リレーが日本におけるOMの受容と展開において果たした役割について検討することがねらいとなる。また、東京2020大会聖火リレーには、サポートランナー制度を採用した集団リレーの形式のように1964年東京大会の記憶を具体化するプログラムも確認できることから、海外の事例と比較検討することによって、その特徴を整理する。