日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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生涯スポーツ研究部会 » 【課題A】共生社会の実現に向けた生涯スポーツ政策と協働システムをいかに構築するか

生涯スポーツ研究部会【課題A】口頭発表③

2023年8月30日(水) 11:25 〜 12:09 RY305 (良心館3階RY305番教室)

座長:綿引 清勝(東海大学)

11:40 〜 11:54

[生涯スポーツ-A-08] スポーツ中継を通じた視覚障害者のスポーツ理解と面白さの生成に関するコミュニケーション論的分析(政,ア,社)

*植田 俊1、山崎 貴史2 (1. 東海大学、2. 北海道大学)

本報告の目的は、スポーツの中継放送で用いられる〈言葉〉が視覚障害者にいかなるスポーツ実践のイメージをもたらすかを検討することである。
 本研究では、スポーツをまず1)個人で行うスポーツ、2)団体(チーム)で行うスポーツに大別した上で、ア)格闘で勝敗を競うスポーツ、イ)得点の多少で勝敗を競うスポーツ、ウ)演技の出来栄えで勝敗を競うスポーツ、エ)先後着で勝敗を競うスポーツに細分化し、さらに甲)非視覚的鑑賞を前提として言語が駆使され実況解説(=ラジオ放送)されるスポーツと乙)映像を前提として言語が駆使され実況解説(=テレビ放送)されるスポーツに区分した。それを踏まえて、相撲、野球、サッカー、スキージャンプ、フィギュアスケート、競馬を事例として取り上げ、①中継の中でどのような言葉が選択されて状況伝達が行われているか、②その伝達が行われるのはどのような場面状況についてか、③その内容伝達に用いられた表現を聞いて視覚障害当事者はどのような場面イメージを構築するか、の3点について解明を試みた。
 分析の結果、現時点までに、スポーツ中継においては1)客観的に把握した状況を正確に伝える「説明」(=実況)と、2)さまざまな文脈情報や補足知識を添付して行われる状況の「解釈」(=解説)が行われていること、3)「説明」と「解釈」が合わさることで視覚障害当事者はスポーツを「理解」していること、4)「説明」と「解説」がそれぞれ意味をなす(=視覚障害者に理解される)には、それぞれ必要とされる予備的知識が異なること、5)スポーツ中継を通じたスポーツ理解は放送主体から一方向的に発信される情報を受信してのみ行われるための奥行きや幅に限りのある「モノローグ」的理解に留まるが、一緒に観戦する支援者との双方向的なやりとりを通じてなされる「ダイアローグ」的スポーツ理解により面白さを感じていたことが明らかとなった。