日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

講演情報

テーマ別研究発表

競技スポーツ研究部会 » 【課題A】トップアスリート養成をいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題A】口頭発表③

2023年8月30日(水) 11:25 〜 12:09 RYB1 (良心館地下1階RYB1番教室)

座長:内田 若希(九州大学)

11:40 〜 11:54

[競技スポーツ-A-10] トップアスリートの心理的競技力が自身のメンタルヘルスに与える関係性について(心)

*早川 琢也1、髙橋 由衣2、實宝 希祥2、近藤 みどり2、柄木田 健太2、大西 壮流2、立谷 泰久2 (1. 京都先端科学大学、2. 国立スポーツ科学センター)

世界保健機関(2022)では、メンタルヘルスは日常のストレスに対応、自分自身の能力を認識、学習や仕事、自分が所属するコミュニティへの貢献、が実施できるような心の健康状態であると説明している。国際大会でプレーをするアスリートは、極度なプレッシャーに晒されやすい環境下でプレーしており、その結果として様々なメンタルヘルスの課題や心的疾患を抱えているケースが少なくない(Reardon et al., 2019; 立谷, 2018)。このように、アスリートのメンタルヘルス支援は重要な課題であるにも関わらず、充分な支援や情報が行き届いていない現状が窺える。これまで、メンタルヘルスの啓蒙や支援については、教育的支援やスティグマへの対応が主であったが、選手個々の心理的競技力に基づいたメンタルヘルスの支援方法については充分な検証がされてこなかった。そこで、本研究は、主要国際競技大会でプレーするトップアスリートの心理的競技力とメンタルヘルスの関係性について分析をすることを目的とした。 オリンピック・パラリンピック出場経験のある114名を研究対象者とし、JISS競技心理検査(J-PATEA)とK10(メンタルヘルスを測定する尺度)について有効回答を得た。得られたデータについて、J-PATEAの下位尺度3つ(心理的スキル、自己理解、競技専心性)を独立変数とし、K10の総合点を従属変数とした重回帰分析を実施し、性別(男性65名、女性47名)、競技特性(個人種目:81名、チーム種目33名)による比較と、研究対象者全体の傾向について分析した。その結果、研究対象者全体、女性群、個人種目群において、自己理解がK10の総合点に与える影響が確認された(B=-0.28, B=-0.39, B=-0.56)。この結果から、自己理解能力の高まりがアスリート自身のメンタルヘルスに好影響を与えている可能性が示唆された。