日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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競技スポーツ研究部会 » 【課題A】トップアスリート養成をいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題A】口頭発表④

2023年8月30日(水) 11:25 〜 12:09 RYB2 (良心館地下1階RYB2番教室)

座長:谷釜 尋徳(東洋大学)

11:55 〜 12:09

[競技スポーツ-A-14] 我が国におけるアスリート・キャリア政策の政策形成過程(政,経)

「スポーツキャリアサポート戦略」に着目して

*阿部 拓真1、木村 和彦2、作野 誠一2 (1. 大正大学、2. 早稲田大学)

昨年、第 3 期スポーツ基本計画が策定された。そこでは「多様な主体におけるスポーツの機会創出」が謳われ、これまで以上にスポーツ政策の発展・拡充が見受けられる。これらの政策における転換点の1つとして、スポーツ立国の実現に向けた国家戦略化から端を発した点があげられる(遠藤ほか,2012)。
 この流れを受け、国際競技力向上における一方策として位置づけられたアスリート・キャリア政策は我が国特有ともいえる競技と教育が融合したエリートスポーツ体制において展開されてきた(阿部ほか,2021)。 しかしながら、多様かつ複雑なアスリート・キャリアに関する問題に対しては紆余曲折を経ながら支援策を講じてきた。併せて、キャリアの多様性・多義性を扱うことへの政策上の複雑性も指摘されており(村上,2016)、アスリートのキャリア形成支援を目的とした政策の平準化がより一層困難であることが窺える。また、学術においても、アスリートを支援する対象が広範かつ多岐のケースに渡り、体系的な研究の蓄積がなされていない現状にあり、政策立案の礎になるような学術的知見は乏しいことが窺える。これらのことから、アスリート・キャリア政策の問題設定から政策決定するまでの政策形成過程において,議員及び官僚の政策選好による影響が大きいことが推察される。
 以上のことから、本研究の目的は、これまで政策の平準化を模索してきたアスリート・キャリア政策における政策形成過程を明らかにすることである。発表当日は、質的アプローチに基づいた分析結果を報告し、アスリート・キャリア政策の柱である「スポーツキャリアサポート戦略」がどのように形成され展開されてきたのかを明らかにしながら、現在に至るまでの当政策について総括的に議論したい。