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[競技スポーツ-C-13] スノーボードビッグエア競技のパフォーマンス構造モデル(バ)
アスリートの競技力向上を目的とした医・科学支援を行う際、当該種目におけるパフォーマンスとは何かを予め明確にしておく必要がある。そのために、競技パフォーマンスを構成する諸要素同士のつながりをモデル化したパフォーマンス構造モデルを検討することは有用である。スノーボードビックエアは、急傾斜面を滑り降りて踏切台から空中に飛び出し、空中での技を競い合う競技であり、複数の審査員が各演技に採点を行う採点競技である。したがって、ビッグエアの場合、パフォーマンスは各演技の「得点」となる。競技規則によると、この「得点」は、「完成度」、「難易度」、「多様性」、「新規性」、「高さ」によって構成されている。コーチと我々は、高得点を得るには、とりわけ、「難易度」の高い演技が必要であると仮定した。「難易度」で審査員の好印象を得るには、遂行が難しい回転軸の向きで回転し、かつ空中での回転数が多いことが重要である。このことから、「難易度」は踏切時の「回転数」、「回転軸の向き」、および「滞空時間」の3要素によって説明できる。この中でまず、より大きな「回転数」を生み出す力学的要因について検討した結果、踏み切り前に上半身で大きな角運動量を獲得すること、また、その際に生じる、反作用による下半身の回転を抑制することが重要である。上半身の角運動量獲得には体幹の回旋力が必要となるため、上半身の回旋筋群の筋力測定を行い、実際の回転数との関係を検討した結果、大きな回転数を得るには体の回旋筋力が重要であることが示唆された。また、下半身の回転の抑制には、板と雪面との摩擦を大きくする必要があるため、インソール型の圧力センサを選手のブーツ内に挿入し、踏み切り直前の足圧分布を観察した。その結果、回転数の多い選手は板と雪面との摩擦が大きくなるよう板の角度を調整していたと推測された。今後は、その他の構成要素についても検討を行う。