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[学校保健体育-C-06] 幼児期から中学生期における運動能力特性のトラッキング度合いの検証(発)
男子における年長時,小学6年時及び中学3年時の縦断的運動能力データから
本研究は,幼児期から中学生期における男子の縦断的運動能力データを用いて,各運動能力におけるトラッキングの程度を検討することを目的とした.分析対象は,年長時,小学6年時,中学3年時に運動能力測定(年長時:握力,体支持持続時間,長座体前屈,反復横跳び,25m走,立ち幅跳び,ソフトボール投げ/小学6年時・中学3年時:握力,上体起こし,長座体前屈,反復横跳び,50m走,立ち幅跳び,ソフトボール投げ)を実施した男子24名であった.分析方法として,まず各運動能力における全国の平均値及び標準偏差値を用いて,年長時は0.5歳区分でTスコア化し,小学6年時及び中学3年時は各学年内でTスコア化した.そして,それぞれの運動能力値を3群(上位群:55.0以上,中位群:45.0以上55.0未満,下位群:45.0未満)に分類し,クロス集計およびカイ二乗検定と残差分析を適用した.分析の結果,中学3年時と年長時においては,立ち幅跳び及びソフトボール投げに有意性が,中学3年時と小学6年時においては,握力,50m走,ソフトボール投げに有意性が認められた.さらに,中学3年時に上位群であった者は年長時及び小学6年時においても上位群に属する割合が多く,中学3年時に下位群であった者は年長時及び小学6年時においても下位群に属する割合が多い傾向にあった.このことから,全ての運動能力ではないが,年長時や小学6年時の運動能力レベルは中学3年時までトラッキングする可能性があることが示唆された.また,握力を除くと,走・跳・投に有意性が認められたことから,基礎運動能力は他の運動能力よりもトラッキング度合いが高いことが窺えた.特に「投能力」は,年長時と小学6年時ともに中学3年時と関連があったことから,幼児期の投能力特性が中学生期まで大きく影響することが推察された.