日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

講演情報

テーマ別研究発表

健康福祉研究部会 » 【課題B】認知機能の維持・改善に運動・スポーツはいかに貢献するか

健康福祉研究部会【課題B】口頭発表①

2023年8月31日(木) 09:00 〜 09:59 RY301 (良心館3階RY301番教室)

座長:樋口 貴広(東京都立大学)

09:30 〜 09:44

[健康福祉-B-03] バーチャルリアリティを用いた身体協調性を向上させる方法の提案(介,心)

*須田 祐貴1,2、石井 利樹1、原薗 迪子1、福原 和伸1、樋口 貴広1 (1. 東京都立大学人間健康科学研究科、2. 日本学術振興会特別研究員(DC2))

高齢者の転倒の多くは,段差を跨ぐなどの障害物回避場面で起こる。この背景に,高齢者が状況に応じた歩行調整の苦手さが指摘されている。こうした環境変化の中で制御目的(段差に対して一定のマージンを作ってまたぐなど)を達成するためには,身体の多様な自由度(関節など)の協調性が必要である。身体協調性の定量化にはUncontrolled manifold解析が利用され,高齢者の身体協調性低下が示されている。高齢者が状況に応じて動きを調整できない理由には,動きが固定化されることも指摘されている。したがって,動きのバリエーションを増やすための調整経験によって,高齢者の身体協調性が改善できる可能性がある。本研究の目的は,バーチャルリアリティ(VR)環境を用いて動作の調整を促すことが,身体協調性を向上させるかを検討することである。VR環境であれば,転倒の危険がない状況で調整経験を積むことができる。本研究では,まずシステムの有効性を確認するために若齢者30名を対象にした。本研究で使用するVRシステムは,スクリーンに映像を映し出し,足踏みを行うことで歩行しているかのように映像が進む。プレ・ポストテストでは,VR環境下で高さが一定の段差を跨いだ。介入課題では,VR環境下で足踏み動作の途中で左右の段差高が変化する段差に対して空間マージンを最小に跨ぐことが求められた。衝突率,身体協調性(ΔVz)を算出し,プレ・ポストテストの間で比較した。その結果,ポストテストにおいてΔVzが有意に増加した。この結果から,動きの調整経験によって身体協調性が向上することが分かった。しかしながら,衝突率の上昇も見られた。したがって,VR環境下で動作の調整を促す介入は,身体協調性を向上させるため有効である一方で,安全管理の面では改良が必要である可能性が示唆された。今後はシステムの改良とともに高齢者に対して検討を進めていく。