日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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健康福祉研究部会 » 【課題B】認知機能の維持・改善に運動・スポーツはいかに貢献するか

健康福祉研究部会【課題B】口頭発表②

2023年8月31日(木) 09:00 〜 09:59 RY302 (良心館3階RY302番教室)

座長:根本 みゆき(筑波大学)

09:00 〜 09:14

[健康福祉-B-05] 等尺性ハンドグリップトレーニングが認知機能に及ぼす影響(生)

運動習慣のない地域在住中高齢者を対象として

*山形 高司1 (1. 川崎医療福祉大学)

【背景】近年、等尺性筋収縮を用いた筋力トレーニングによる降圧効果が示唆されている(Yamagata et al. 2020)。血圧は認知機能と関連することが知られている(Novak et al. 2010)。すなわち等尺性筋力トレーニングによる認知機能の改善が期待される。先行研究において一過性の等尺性ハンドグリップ運動による認知機能の向上が示唆されているが(Washio et al. 2021)、トレーニングに伴う認知機能の変化に関する報告は知る限りにおいてみられない。そこで本研究の目的は、等尺性ハンドグリップトレーニングによる認知機能への影響について検討することとした。
【方法】対象者は運動習慣のない地域在住中高齢者14名とし、コントロール(C)群6名とトレーニング(T)群8名にランダムに割り当てた。トレーニングは等尺性筋収縮を用いた30%MVCによる2分間の等尺性ハンドグリップ運動とし、1分間の休息をはさんで左右交互に4セット実施した。トレーニング頻度は週3回、期間は8週間として、介入前後の安静時血圧および認知機能を測定した。認知機能の測定には、ストループテストを用いた。介入期間前後における測定値の変化量の群間比較には、Mann-Whitney検定を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】拡張期血圧はT群でC群に比して有意に低下した(平均値の群間差:-4.8 mmHg、P = 0.047)。ストループテストの測定値は、ストループ課題の反応時間およびストループ干渉率の変化に両群間で有意な差は認められなかったが、単純課題における反応時間はT群でC群に比して有意な短縮が認められた(平均値の群間差:-0.12 sec、P = 0.043)。
【結論】 運動習慣のない地域在住の中高齢者を対象とした8週間の等尺性ハンドグリップトレーニングは、降圧とともに情報処理速度を向上させる可能性が示唆された。