日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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健康福祉研究部会 » 【課題B】認知機能の維持・改善に運動・スポーツはいかに貢献するか

健康福祉研究部会【課題B】口頭発表②

2023年8月31日(木) 09:00 〜 09:59 RY302 (良心館3階RY302番教室)

座長:根本 みゆき(筑波大学)

09:15 〜 09:29

[健康福祉-B-06] 高齢者における道路横断判断に対する知覚トレーニングの効果検証(測,心)

*佐藤 和之1、樋口 貴広1 (1. 東京都立大学)

【はじめに】高齢者の死亡事故の中には,道路横断時の判断ミスに起因するものは少なくない。判断ミスの1つに、車の接近速度を正確に認識していない問題がある。車の接近速度の認識ためには、接近に伴う網膜上の車のサイズの拡大率を正確に知覚する必要である。高齢者はこの拡大率の知覚感度が低下し、衝突予測能力が低下する可能性があることから、高齢者の道路横断判断の改善には、移動物体の拡大率の知覚を改善させる練習が効果的であると考えられる。そこで本研究では高齢者を対象に、接近物体の拡大率の知覚に特化した練習が、衝突予測能力および道路横断判断の改善に有効であるか検証した。【方法】65歳以上の地域在住高齢者18名(72.5±5.8歳)を、拡大率の知覚に特化した練習課題群(ET群)とインターセプション課題群(IT群)との2群にランダムに分類した。それぞれの課題の練習時間は1時間とした。練習効果の判定として、衝突予測パフォーマンス、接近物体の拡大率に対する感度、道路横断判断の正確性を評価した。練習前後の2地点の測定時期における各アウトカムが練習課題によって異なるかを線形混合モデルで分析した。【結果】衝突予測パフォーマンス、接近物体の拡大率に対する感度に関して、測定時期および練習課題の効果は有意ではなかった。道路横断判断の正確性に関して、練習課題と測定時期の有意な交互作用効果を認めた。ET群では、練習前から練習後にかけて有意に道路横断判断の正確性が改善した。一方、IT群で有意な変化はなかった。【考察】拡大率の知覚に特化した練習が道路横断判断の改善に有効である可能性が示唆されたが、移動物体に対する衝突予測能力および拡大率の感度改善の効果は十分ではないと考えられた。今後は知覚感度の改善を伴う道路横断判断の正確性が向上する練習システムの開発が必要である。