日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題B】人々の生活に根ざした多様なスポーツ文化をいかに醸成していくか

スポーツ文化研究部会【課題B】テーマ別シンポジウム/「多様性」を実践するとは―その理想と難しさの狭間で―

2023年8月31日(木) 10:10 〜 12:10 RY303 (良心館3階RY303番教室)

コーディネーター:周東 和好(上越教育大学)、山口 理恵子(城西大学)

[スポーツ文化-SB-2] 市民ランニングによる多様性の実践

*山西 哲郎1 (1. 群馬大学名誉教授)

<演者略歴>
昭和43年3月 東京教育大学大学院 体育学研究科 修士課程修了
昭和43年4月 東京教育大学 体育学部 助手
平成5年4月 群馬大学 教育学部 教授
平成11年 日本体育学会 会長
1970年代の市民スポーツ、特に、ランニングは中高年の市民によって生活化され生涯スポーツの主たる種目になって今日まで至っている。それは前回の本シンポジウムの「身体・組織・支援の観点から」と合わせて検討すれば十分に理解できる。
 市民によるランニングの普及は、欧米を中心に運動不足対策として科学的に有酸素運動としてのジョギングが認められたからである。そこで、障害者にもラン・ウオークが適した運動として実践され、特別支援学校の生徒にとっても身体的にも心理的にも同様である。
 75年にホノルルマラソンは心臓病のリハビリで回復した患者のための大会を年令は11歳以上、42.195㎞を制限タイムは問わない条件で始めた。そこで、学校生活のなかで健康と楽しみつくりを日常化して、その目標として高等部の修学旅行としてこの大会に参加することとした。各生徒に伴走者をつけ、走と歩の組み合わせを繰り返す技術を身につけ、全員がゴールを目指すことにある。それには、長時間わたって継続する心身の困難を、走る楽しさをもって、参加者と共有できる感性を持てるように努めた。
 障害が社会的不利にならないようにする、それには能力不足の改善と社会的条件を改善することを前提にして、従来、創り上げてきたランニング文化を全うできるのである。