日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題C】多様なスポーツ文化の保存・流通・促進をいかに刷新していくか

スポーツ文化研究部会【課題C】口頭発表①

2023年8月31日(木) 13:30 〜 14:29 RY303 (良心館3階RY303番教室)

座長:久保田 浩史(東京学芸大学)

14:15 〜 14:29

[スポーツ文化-C-04] 三浦ヒロの国民保健体操(初代ラジオ体操第1)への関与(史,教)

音声資料(レコード)に着目して

*苫米地 里香1、崎田 嘉寛2 (1. 北海道大学大学院、2. 北海道大学)

三浦ヒロ(1898-1992)は、戦前期に東京女高師教官(1926-35)、文検体操科試験委員(1927-34)、要目調査委員(1934-35)を歴任しており、在外研究(1923-26)の経験と女子体操科教員の養成とを踏まえて、ダンスを主要教材とした人間教育としての児童・女子体育実践を追求している。そのため、先行研究においては、彼女の教育思想やダンス観、指導理論と実践及びその背景に関する研究が蓄積されている。しかし、戦前期に学校・社会体育の中心であった体操に着目した三浦ヒロ研究は管見の限りない。 本研究は、三浦ヒロが国民保健体操(初代ラジオ体操第1)の創案とその普及にどのように関わったのかについて明らかにすることを目的とする。具体的には、(1)三浦が自著において国民保健体操にどのように言及しているのかを調査する。補足的に、先行研究者が収集した彼女の手紙も確認する。(2)国民保健体操の創案から初期普及時の資料を収集し、国民保健体操の先行研究を踏まえて考察する。 本研究の結果、(1)三浦の全著書と関連資料を確認した結果、国民保健体操への言及はごく僅かであり、唯一リズミカルである点を評価していることが確認できた。(2)まず、三浦が国民保健体操の考案委員となった理由は資料的には確定できなかったが、東京女高師所属であったためと推察された。次に、彼女が各運動の創案にどのように関与したかは不明であるが、在外研究の経験が生かされた可能性があると推定された。最後に、普及については、彼女は初期講習会等に参画していないが、宣伝用のレコードに音声で関与している。ただし、このレコードは550組しか作成されておらず、収集できたレコードの音声内容に基づけば、普及への貢献は限定的であったと判断できた。総じて、三浦ヒロは国民保健体操への創案と普及に関与したが、その影響は極めて限定的であったと考えられる。